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アジア 6年前

ACL制覇の浦和、阿部勇樹が流した涙。悪い時こそ先頭に立つ独自の主将像

text by 藤江直人 photo by Getty Images

浦和のキャプテンは「阿部さんにしかできないと思います」(槙野智章)

 このときの阿部の行動を、選手たちはちょっと時間がたってからSNSなどを介して知った。驚くとともに、あらためて阿部の人間性に胸を打たれた。寡黙でシャイな男が見せるキャプテンシーを、「決して悪い意味ではないですよ」と断ったうえで、DF槙野智章がこう説明してくれたことがある。

「キャプテンらしいくないキャプテンだと思います。キャプテンは嫌われ者にならないといけないし、先頭に立って言葉や行動を発することも求められますけど、阿部さんというキャプテン像は、僕たちの個性を生かすためにまず好きなことをやらせてくれる。

 それでいて、チームがよくないとき、マイナスのときこそ先頭に立って、悪い気を吸い取ってくれるというか。いままでいろいろなキャプテンを見てきましたけど、浦和というチームの個性を生かすためには阿部さんがぴったりだと思うし、阿部さんにしかできないと思います」

 もっとも、ステージ優勝はタイトルにはカウントされない。2006シーズンを最後に遠ざかっているJ1制覇へ。準決勝から登場した2015シーズンのJリーグチャンピオンシップでは、ホームの埼玉スタジアムで戦えるアドバンテージを生かせず、延長戦の末にまたしてもガンバに屈した。

 2016シーズンも試練は続いた。歴代最多タイとなる勝ち点74を獲得し、年間総合順位でトップを取って進んだJリーグチャンピオンシップ決勝。敵地での第1戦を1‐0で制し、ホームでの第2戦でも開始早々に先制しながら、FW金崎夢生に2ゴールを奪われて逆転負けを喫した。

 2戦合計で2‐2の同点となり、アウェイゴール数の差で年間総合順位3位のアントラーズに下克上での優勝を許した。YBCルヴァンカップこそ制していたものの、FIFAクラブワールドカップ2016へ開催国王者として挑戦する夢は無残にも砕け散った。

「鹿島がクラブワールドカップでひとつひとつ勝ち、たくましくなっていく姿をテレビで見ていた。自分たちも鹿島のように、成長していかなきゃいけないと」

 アントラーズが日本勢として初めて決勝に進出し、クリスティアーノ・ロナウドを擁するレアル・マドリー(ヨーロッパ代表)と延長戦にもつれ込む死闘を演じる姿を応援しながら、槙野は悔しさを捲土重来の誓いに変えた。守護神の西川周作も、思いをシンクロさせている。

「ここぞというときに勝てないとずっと言われていましたけど、そこは自分たちの力でしか払拭できないと思っていたので」

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