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アジア 6年前

ACL制覇の浦和、阿部勇樹が流した涙。悪い時こそ先頭に立つ独自の主将像

text by 藤江直人 photo by Getty Images

試合後に語った自分たちの責任と使命

 あふれんばかりの喜びを押し殺しながら、努めて冷静にACL制覇を振り返った阿部だったが、5万7000人を超える大観衆によって作られた、選手入場時のコレオグラフィーには心を震わされ、大一番へ向けてのモチベーションが駆りたてられたと感謝する。

「すごくいっぱいだな、すごく綺麗だなと思った。正直、毎試合これだけの人に入っていただきたいといのは、すごく贅沢な話かもしれない。でも、僕らがこの先もしっかり戦って進んでいけば、それも遠くない日に訪れるんじゃないかなと。それは僕らの責任でもあるし、使命でもあると思っている」

 表彰式でもベンチ入りした他の17人の選手、堀監督以下のコーチングスタッフに続いて最後で登壇した。どこまでも黒子に徹する阿部が、アジア制覇の喜びに浸るのも一夜限り。平川忠亮とともに、前回のACL優勝を知る伝道師にもなったいま、立ち止まっているつもりはない。

 J1戦線に目を向ければ、10月の段階で優勝の可能性は消滅。来シーズンのACLで連覇を狙うこともかなわない状況になった。

「この先につなげていかなきゃいけない戦いが、この先に待っている。先を見すえながらやっていかなきゃいけない、という責任もあると思っているので」

 ACL決勝の関係で分離開催となる、29日の川崎フロンターレ戦を含めたJ1の残り2節へ。そして、アラブ首長国連邦(UAE)で6日に開幕するFIFAクラブワールドカップ2017では、アル・ジャジーラ(開催国代表)とオークランド・シティ(オセアニア代表)の勝者と対峙する9日の準々決勝をクリアすれば、12日の準決勝ではレアル・マドリー(ヨーロッパ代表)と対戦できる。

 愛してやまないレッズを、名実ともに日本およびアジアを代表するビッグクラブに導くために。図らずも阿部が見せた涙にはファンやサポーターに喜びを届けられたという安ど感と、歓喜のACL制覇は通過点にすぎないという熱い決意が込められていた。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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