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アジア 6年前

ACL制覇の浦和、阿部勇樹が流した涙。悪い時こそ先頭に立つ独自の主将像

text by 藤江直人 photo by Getty Images

9月以降に大きく変わった役割。主戦場はセンターバックに

4バックへシフトしてからはセンターバックで出場している阿部勇樹
4バックへシフトしてからはセンターバックで出場している阿部勇樹【写真:Getty Images】

 チームメイトたちがそれぞれの胸に秘めた思いを、阿部はすべて背負ってきた。迎えた今シーズン。開幕直後はまさに無双状態にあったレッズは、最下位にあえいでいた大宮アルディージャとのさいたまダービーで喫した4月30日の黒星を境に、急激な失速を余儀なくされた。

 サッカーの怖さとでも言うべきか。昨シーズンはリーグ最少の28失点だった堅守が脆くも崩壊し、J1戦線を折り返した17試合を消化して時点で29失点を計上してしまう。順位も8位にまで下げてしまった7月末に、ペトロヴィッチ前監督は解任された。

 バトンを受け継ぐかたちで、コーチから昇格した堀孝史監督は9月17日のジュビロ磐田戦から、前任者の象徴だった「可変システム」から、いま現在のハリルジャパンをほうふつとさせる「4‐1‐4‐1」に変更する大ナタをふるった。

 同時に阿部の役割も大きく変わった。前任者のもとではシステムを攻撃時と守備時で切り替える際のキーマンとなるボランチを長く担ってきたが、堀監督からはセンターバックとして、最終ラインをコントロールする役割を託された。

 初めて経験するポジションではない。それでも、シーズンの途中に、慣れ親しんだシステムとポジションを捨て去るのは決して容易なことではない。それでも、青木拓矢がアンカーに、遠藤航が右サイドバック、長澤和輝がインサイドハーフに配された新布陣を、阿部は縁の下で支え続けた。

 この姿こそが槙野をして「チームがよくないとき、マイナスのときこそ先頭に立って、悪い気を吸い取ってくれる」と言わしめた阿部の真骨頂となるだろう。内容よりも結果を重視する堅守速攻の戦い方は強豪がそろうACLで奏功し、激闘の連続の末についに頂点に立った。

「ACLという大会に限っては、今年は優勝というかたちになったのでよかったかなと思いますけど。この大会がすべてではないし、まだまだ続いていくので頑張らなきゃいけないと思っています

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