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Jリーグ 6年前

川崎F・谷口彰悟の激怒。奇跡の逆転優勝への覚悟。人事を尽くした先に待つ天命

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「僕たちにはもう失うものはない」

 舞台となった埼玉スタジアムには、今シーズンに限れば、ちょっとしたトラウマが刻まれていた。

 9月13日に行われた、日本勢同士の激突となったACLの準々決勝第2戦。ホームの等々力陸上競技場での第1戦を3‐1で快勝し、敵地でもレッズから先制点を奪いながら、車屋の退場とともに状況は一変。後半に3点を奪われる、悪夢の逆転負けを味わわされた。

 まだ記憶に新しい11月4日のYBCルヴァンカップ決勝。開始早々の47秒にミスから献上した先制点でリズムを狂わされたフロンターレは、攻守両面で相手を握り倒す今シーズンの“らしさ”を発揮できず、ともに悲願の初タイトルを目指したセレッソ大阪が歓喜するシーンを目の当たりにした。

 それでも、決して小さくはない挫折を味わわされるたびに、今シーズンのフロンターレはどん底からはい上がってきた。その原動力になったのは自分たちのスタイルに対する絶対の自信と、もうひとつはレッズ戦で谷口や奈良が見せた、勝負は細部に宿るという精神にも則った、絶対に妥協を許さない厳格な覚悟となるだろう。

 実際、1試合だけ行われる分だけプレッシャーがかかったなか、レッズの出足の激しさも相まって、なかなかボールを保持できなかった。放ったシュートは7本と、レッズの8本よりも少なかった。それでも動じることはなかったと、谷口は笑顔で振り返る。

「今シーズンはこういう試合がけっこうあったし、思うようなサッカーができないなかでもああやって先に点を取ってくれたので、絶対にゼロで終わらせるというか、そういう戦い方もできていたので。ある程度割り切って、勝つことだけを考えてやりました。

 こう言ったら何ですけど、僕たちにはもう失うものはないので。しっかり戦って勝てばいいと思っているし、ここ最近の練習から勝てる自信は相当あったので、何の心配もなくゲームに入れました。チームの成長というものを感じますよね」

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