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Jリーグ 6年前

川崎F・谷口彰悟の激怒。奇跡の逆転優勝への覚悟。人事を尽くした先に待つ天命

奇跡の逆転優勝へ、川崎フロンターレが望みをつないだ。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝との関係で、1試合だけ分離開催された11月29日の浦和レッズ戦で、前半14分にキャプテンの小林悠があげた決勝点を死守。首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差を2ポイント差に縮めて、12月2日の運命の最終節に臨む。レッズ戦であわや同点、そして終戦となる絶体絶命のピンチを救った直後に、チームメイトに対して激怒した日本代表DF谷口彰悟の覚悟を追った。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

端正なマスクにみなぎった怒気

川崎フロンターレのDF谷口彰悟
川崎フロンターレのDF谷口彰悟【写真:Getty Images】

 端正なマスクに怒気がみなぎっている。眉間にしわを寄せた川崎フロンターレのDF谷口彰悟が右手を振りあげ、鋭い視線を前方の左サイドへ送りながら激しく怒鳴り声をあげた。

 映像で確認した口の動きから察するに、川崎フロンターレの最終ラインを束ねる26歳の副キャプテンは、こんな言葉を発していたはずだ。

「何やってんだ、こらっ!」

 浦和レッズがAFCチャンピオンズリーグ(ACL)決勝を戦った関係で、1試合だけ11月29日に分離開催された第33節。フロンターレが引き分け以下に終わった時点で、試合のない鹿島アントラーズのJ1連覇が決まる大一番で、決定的なピンチを招いたのは後半32分だった。

 最終ラインに下がったMFエドゥアルド・ネットからボールを受けた谷口が、左タッチライン際にいたMF阿部浩之へパスを送る。そして、阿部が前方にポジションを取っていた、左サイドバックの車屋紳太郎にボールを預けた直後だった。

 狙いを定めていたのか。車屋の後方にいたレッズの右サイドバック、森脇良太が死角の位置から入り込んでくる。簡単に失われたボールはMF武藤雄樹を介して、再び森脇のもとへ。この時点で、攻撃から守備への切り替えがワンテンポ遅れていた。

 真っ先に森脇へプレッシャーをかけるべき阿部の寄せが甘い。視野を十分に確保した森脇は阿部をブロックしながら、左足で縦パスを前線へ送り込んだ。あうんの呼吸で、ワントップのズラタンが最終ラインの背後に抜け出していた。

 谷口との距離は約5メートル。センターバックを組む奈良竜樹も慌ててカバーリングに走る。一方では前方へ大きくポジションを取っていた、右サイドバックのエウシーニョは戻り切れていない。ゆえに広大なスペースが、フロンターレから見た右サイドには広がっていた。

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