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Jリーグ 6年前

横浜FMの喜田拓也、6年目の進化。アンカーで感じる「面白さ」、勇気と挑戦の体現者に

text by 舩木渉 photo by Getty Images

「絶対に狙われる。対策以上のものを出していきたい」

 練習ではコーチのピーター・クラモフスキーから日本語で「体の向き!」「半身!」といった声が飛ぶ。その熱い指示は、とりわけ喜田に対して多くかけられる。ボールを保持し続けることで主導権を握るマリノスの新たなサッカーを成立させるために、アンカーを務める選手のパフォーマンスが安定していることは最も重要な要素の一つだ。

「単純にスペースが広い時もありますけど、周りの距離感が常に良いとは限らない。もちろん常に良い状態を目指しますけど、イレギュラーもありますし、ゲームの流れもある。いろいろな意味でのバランスが難しいこともありますけど、周りと関係性を作っていくのもそうだし、自分でどうにかするのもそうだし、そういうのはもっと高めていけると思う」

 アンカーとして独り立ちできれば、選手としてのプレーの幅は一気に広がるだけに「やりがいはあると喜田は語る。「(自分のところが)狙われたりすることもあると思う。(アンカーは)1枚ということもあるし、絶対対策を立ててくる。そこをかいくぐって、その対策以上のものを出していきたい」と、成長への底知れない貪欲さで意欲的に新たな役割の習得に取り組んでいる。

 元より守備面の能力の高さに定評があっただけに、パスでのゲームメイク能力や、展開を読んで臨機応変にプレーの質を変える力を身につければ鬼に金棒。より完成度の高いセントラルMFとして、新たな世界が広がってくるだろう。

 実際、開幕前最後のプレシーズンマッチとなった先月17日のFC東京戦、同25日のセレッソ大阪戦、今月2日の柏レイソル戦と試合を追うごとに攻撃面での効果的な動きが増え、90分を通して安定してプレーに関与する質が向上しているように見える。徐々に周囲との呼吸を合わせながら、一つひとつのプレーの精度を上げ、自分らしいアンカー像を作っていく作業の途中だ。

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