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16歳久保、CM出演はまだ早い。過度の期待を背負わせる不安、注目すべきはピッチ上の姿【宮澤ミシェルの独り言】

日本代表選出経験も持つ元Jリーガーで、現役引退後は解説者として活躍中の宮澤ミシェル氏の連載企画。第3回は、久保建英について。CM出演に関する報道が出た16歳のレフティーについて宮澤氏が持論を展開。さらに、久保のプレーヤーとしての魅力も語っている。(語り手:宮澤ミシェル)

シリーズ:宮澤ミシェルの独り言 text by 青木務 photo by Junichi Ebisawa , Getty Images

デビュー当時のメッシは先輩たちに守られて、みんなの子どもみたいだった

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宮澤ミシェル氏が久保建英について語る【写真:海老沢純一】

 FC東京の久保建英が、清涼飲料水メーカーのCMに出演するという報道を見た。個人的には正直、まだ早いんじゃないかと思う。確かに、久保には『バルセロナ』というのがある。サッカーをよく知らない人には引っかかりやすいというか、仮に久保のことはわからなくても「バルセロナにいた子だ」となる。でも今、スター街道に乗せてしまうのは可哀想だなと。

(リオネル・)メッシは17歳でデビューしたけど、ロナウジーニョやエトーといった先輩たちに守られていて、みんなの子どもみたいだったよね。その年代ごとのやるべきことをしっかりやっているから、今があるわけで。若い頃から無理をさせちゃうと良くないし、もったいないよ。

 もちろん久保はいい選手だよ。ただ、プロの世界で継続的に結果を出しているわけではない。何と言うか、まだ隠しておいてじっくり育ててほしい。ちゃんと育てて18歳、19歳になったら露出を増やすようにすればいいと思う。

 ヨーロッパでは10代で出てくるような選手って、例えば(アレッサンドロ・)デル・ピエロもそうだったけど、その時点ですでにスーパースターだから。ネイマールだってそう。日本の10代とはちょっと違う。

 1999年のコパ・アメリカでブラジルの試合を解説していたんだけど、その大会でロナウジーニョが出てきた。彼がピッチに立ったらブラジル人の観客が沸いちゃって。「俺たちのロナウジーニョが出てきたぞ」みたいな。僕は「そんなにすごい選手なの?」って思ったんだ。でも、サポーターはロナウジーニョが次のスターになるというのをわかっている。彼らは物差しとして持っているんだよね。「次のペレはコイツだ」と。僕はそれに感動しちゃって。

 そこからパリ・サンジェルマンに行って、2002年の日韓ワールドカップで優勝。どんどん階段を上がっていって、バルサの時なんかハンパじゃなかった。ああ、スーパースターってこういう風になっていくんだなって思ったよ。ブラジルはその前に怪物の方のロナウドやリバウドもいて、そうやって続いているんだよ。

 僕はそれが言いたいんだ。日本もズバ抜けた選手が継続して出てくるというサイクルが続くようにならないといけない。だから今、久保と言われた時に、まだ早いだろうと思ってしまうんだ。久保本人が背負っちゃって、彼のためにならないんじゃないか。

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