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テア・シュテーゲンは『グローブをつけたメッシ』。完璧主義者、ノイアー越えなるか【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

たった1つのポジション

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マヌエル・ノイアー【写真:Getty Images】

 GKのポジションは1つだけだ。どんなに優秀なGKが2人いても、同時にプレーすることはできない。それがいくつものドラマや確執を生み出してきた。

 かつてイングランド代表にはレイ・クレメンス、ピーター・シルトンという偉大なGKがポジションを争っていた。シルトンの代表記録125試合は、名手クレメンスと競ったうえでの記録だったことにいっそう価値があった。

 強力なライバルの存在は互いの進歩につながる。そう簡単にミスをしないライバルにいったんポジションを奪われたら、なかなか取り戻せない。良いGKを交替させる機会というのはそうないものである。だから、強力なライバルを持ったGKはより完璧主義に磨きをかけることになる。

 テア・シュテーゲンもノイアーの負傷欠場がなければ、第二GKのままだったろう。2人の関係はオリバー・カーンとイェンス・レーマンに似ているかもしれない。

「ノイアーが戻れば、彼が正GKだ」

 テア・シュテーゲンはそう話している。本心はどうかわからないが。偉大なライバルの負傷や不振がないかぎり、第二GKには出番が回ってこない。ただし、ポジションをつかんだところで偉大な元第一GKが復活すれば、とくにミスがなくてもポジションを失うことはある。専門のコーチから見れば、甲乙つけがたい2人のGKでも意外と優劣ははっきりしているものだからだ。

 ただ、成長したテア・シュテーゲンはノイアーと肩を並べる存在にはなっていると思う。少なくとも完璧なテア・シュテーゲンは完璧でないノイアーを上回っているのではないか。

(文:西部謙司)

【了】

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