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クラシコは選手を虜にする。両者の「引き出し」の多さ、日本にはないバルサの1点目【宮澤ミシェルの独り言】

シリーズ:宮澤ミシェルの独り言 text by 青木務 photo by Junichi Ebisawa , Getty Images

ギリギリの精神状態で発揮されるハイパフォーマンス

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スアレスとセルヒオ・ラモスも一悶着あった【写真:Getty Images】

 その少し前にはスアレスとセルヒオ・ラモスも一悶着あった。そして、プレーが再開するとメッシがセルヒオ・ラモスへ猛然とタックルに行った。映像を見ると、メッシは左足で取りに行っているんだよね。その左足は全くファウルじゃない。セルヒオ・ラモスが切り返そうとした時に、後ろのかかとが軸足に引っかかった。だから、メッシはファウルしていないんだよ。それなのに笛が鳴ったから怒るんだよ。

 その後みんな、セルヒオ・ラモスを退場に追い込もうと思ってスアレスが一生懸命倒れたりして。でもなかなか2枚目が出ないんだよね。ああいう駆け引き、みんなが千両役者だよ。『コイツを追い込めばもう一枚イエロー出るぞ』とかね。ああいうのを見ていると、僕はワクワクするんだよね。「コイツらのやり合い、すごいな」って。そのやり合いも含めて、引き出しの多さなんだ。

 精神状態としてはギリギリのところで保っているんじゃないかな。こっち側に落ちて善人として喜ばれるか、反対側に落ちて“犯罪者”になるかというような。レフェリーもジャッジミスの連続だよ。だけど、しょうがないよ。選手たちはみんな、その上を行っちゃっている。キレるかキレないかというギリギリのところですごいパフォーマンスを見せるから。

 ディフェンスラインではめ込まれて、例えばセルヒオ・ラモスが縦のコースを切られちゃったとする。でも、相手が来ていても平気で中に切り返すからね。それで、5m前に持ち出すんだよ。その持ち出しで相手をひっくり返せる。マークがズレていくから、運べるか運べないかはすごく大事。それも引き出しだし、プロが唸る試合だよね。

 マルセロもちょっとボールを動かすだけで、角度を変えた瞬間にパス1本通るんだよね。それが日本では持ち出せずに後ろに下げちゃうんだよ。決め事になってしまっているんだよね。それを僕はJリーグで解説する時によく言っているんだ。センターバックがいいパスをくれたのに、相手が少し視界に入っただけで下げちゃう。そこで運べれば、前にパスを出せるのに。それができるかできないかなんだよね。

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