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クラシコは選手を虜にする。両者の「引き出し」の多さ、日本にはないバルサの1点目【宮澤ミシェルの独り言】

シリーズ:宮澤ミシェルの独り言 text by 青木務 photo by Junichi Ebisawa , Getty Images

クラシコは選手たちを虜にする

 昔、僕はよく言われたんだよ。ヴェルディ時代のペレイラとか、セルジオ(越後)もそうだし、マリーニョとかに。ディフェンスラインで簡単にタッチラインの外に出して、相手のスローインにするのがあるじゃない? 彼らは「あそこがプロの見せ所なんだ」と言うんだ。小さい時にいいプレーとしてやらせていないから、そういうことができるJリーガーが少ない。

 プロの世界も究極に困った時は外に出した方がいい場面はあるし、バルサだって何回も失敗している。でも、繋ごうとして取られちゃうこともあるけど、彼らは小さい時からやり続けているから。タッチラインに追い込まれているのに、誘って誘って切り返してパスするとか、そういう選択肢を持っている。

 今回のクラシコは非常に締まったゲームだった。キーパーが2~3点ずつ防いでいた。5-5のゲームが、キーパーやディフェンスのファインプレーで2-2のゲームになるから面白いんだよね。たまらないね。ああいう風になるまでに、どれくらいの練習の質と量と、試合経験が必要かというね。

 あの舞台に立っている選手というのは、チャンピオンズリーグを毎年、経験している。クラシコも毎年必ずある。リーグ戦、カップ戦とあらゆるタイトルに絡んでいる。ワールドカップがあれば、ほぼみんな出場する。世界中のプレッシャーもあるけど、クラシコは選手たちを虜にするんだよ。不安に思っている奴なんて、突然スタメンになっちゃったとか、たまたま使われるような選手だけ。

 他の選手はウズウズしていると思う。試合前とか、そっちの感情で眠れないんじゃないかな。「ミスしたらどうしよう」なんて考えている奴は多分、一人もいない。「明日はヒーローだ」って考えていると思う。

 そういう奴らが真剣勝負を繰り広げるから色々なドラマが生まれるし、僕らはいつもワクワクさせられるんだ。

▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。

【了】

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