フットボールチャンネル

日本代表 6年前

森保J、岩崎悠人の突進力が逆風を追い風に変えるか。パキスタン戦で「全員戦力」の証明を

text by 舩木渉 photo by Getty Images

3森保ジャパンに足りない「強引さ」を持つキーマン

岩崎悠人
他のFWたちとは違った特徴を持つ岩崎悠人。森保ジャパンの流れを変えるキーマンになるか【写真:Getty Images】

 全体練習で戦術の確認をできていない現状も理解しているが、「もう少しビルドアップで押し上げる前に背後を狙っていい場面だったり、もう少しサイドで仕掛けながら、簡単にクロスを入れて、中で合わせるシーンも作れればよかった」と岩崎なりの改善策も頭の中にある。そして停滞感を拭えない状況だからこそ、自分の持ち味が生きるとも胸を張る。

「昨日あまりなかったゴールに向かう仕掛けの部分を、自分の持ち味でもあるので、出していければいい」

 かつて高校No.1ストライカーと呼ばれた才能は、プロになって壁にぶつかって挫折を経験し、「持ち味」を失いかけた。昨年韓国で開催されたU-20ワールドカップでは、攻撃の中心として期待されながらノーゴール。チームもベスト16で敗退してしまい、一度はプレーへの自信を失ってしまった。それを岩崎は「ゴールへの意識が薄まった」と振り返る。

 だが、懸命に気持ちを立て直し、所属する京都サンガF.C.で継続的に試合出場を重ねる中で、徐々に自信を取り戻していった。「U-20ワールドカップの時も、初めて森保さんの代表に呼ばれた中国(今年1月のAFC U-23選手権)でもそうだったんですけど、たぶん自分でゴールに向かっていくシーンが少なかった」と述懐する岩崎は、「そういうシーンを今回増やしていければいいかなと思います。もし次出れば、ゴールに向かっていきたい」と力強く言い切った。

 岩崎は今季、京都の主力として昨季以上の出場数を重ねてきた。チームはJ2最下位と危機的状況にいるが、「最近の試合でもそうですけど、サイドで1対1で仕掛けること、ドリブルのところは自信もついてきました」とサイドアタッカーとして仕掛け続け、ゴールへの推進力に磨きをかけている。

「ネパール戦を見ていても思ったんですけど、ああやってこう着した時に、仕掛けられる選手が流れを変えられると思いました。ベンチにいた遠藤渓太くんとか、(前田)大然も(相手最終ラインの)背後に抜けられる。そういう他とちょっと違った特徴を活かしながらやれればいい」

 攻撃に迫力がなかったネパール戦では、ゴール前を固めて引いてくる相手に対して単調な崩しばかりで、ドリブル突破やアーリークロス、ミドルシュートなどがほとんどなかった。ただ、時に美しさを捨てた強引さが状況を好転させることもある。 

 もし小手先のテクニックや華麗さを求めるならば、岩崎には声がかかっていないはず。森保監督が期待しているのも、ゴールへの意欲や推進力に違いない。野心溢れるストライカーが自らの特徴を存分に活かし、チームの競争を活性化させられるか。アジア大会での今後の戦いを左右する重要な役割が、まさに岩崎の武器そのものにある。

(取材・文:舩木渉【インドネシア】)

【了】

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top