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日本代表 6年前

青山敏弘の類稀な人間力。全てが必然だった32歳での再招集、日本代表の新主将への抜てき

text by 元川悦子 photo by Getty Images

青山が新キャプテンを任された理由

青山敏弘
青山敏弘(右)と森保一監督(左)の間には広島時代から培った信頼関係がある【写真:Getty Images】

 森保監督は10月からロシアワールドカップ組の主力を段階的に招集する方針を明らかにしていて、吉田が再合流すればキャプテンに据える可能性が高い。ただ、サンフレッチェ広島で長く共に仕事をした深い絆と戦術理解度、今回の大地震の経験という点を踏まえると、青山にそのまま大役を任せ続けることも十分に考えられる。それだけの絶大な信頼を指揮官から寄せられているからこそ、32歳のベテランボランチは「自分がやらなければならない」という自覚を強めているのだ。

 札幌合宿打ち上げの日、青山は「何もなく札幌での試合がしたかったですし、それが一番の日本代表の強化につながると思っていた。それがなくなったからこそ、1つになれることはあったと思う。サッカーだけじゃなくて、人としてサッカーを超えたところで得るものは大きかった。僕自身も一番大変な時に大役を任されましたけど、みんなの思いは1つ。個人個人でアピールしなきゃいけないというのもあるけど、誰1人逸れていないし、どう支え合っていくかを考えて非常にいい方向に向いている。それをサッカーにつなげたい」と神妙な面持ちで語っていた。

 若手中心の森保ジャパンを精神的にタフな集団にまとめ上げることができたなら、その成果をコスタリカ戦で出すしかない。7日に行われた紅白戦を見ても、主力組のボランチに入った青山は攻守両面でタクトを振るい、チーム全体を力強くけん引。強い責任感と意思を前面に押し出していた。

 35分で行われた紅白戦の1本目はベルギー移籍で成長の跡を示した遠藤航とのボランチコンビで的確に攻撃のスイッチを入れ、タテへの推進力を発揮していた。その最たるシーンが7分の南野拓実の決定的なシュートが右ゴールポストを強襲したシーンだ。青山のタテパスに右サイドバックの室屋成が鋭く反応。長年の盟友にマイナスクロスを入れる形だったが、青山の強気のパス出しが相手守備陣の背後を突く効果的な攻めにつながった。

 22分間と短めだった2本目は、不慣れな守田英正とのコンビでバランスを取るのに苦慮していたが、青山が他のメンバーをコントロールしていたのは確か。森保監督もその一挙手一投足の目の当たりにして、さらに信頼と期待を深めたはずだ。新体制の初陣となるコスタリカ戦でも、この男に託すものは少なくないだろう。

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