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Jリーグ 6年前

「マリノス内紛」は本当にあったのか? 指揮官の真意は選手批判にあらず

text by 舩木渉 photo by Getty Images

監督と選手、お互いの歩み寄りと信頼がなければ…

ウーゴ・ヴィエイラ
ウーゴ・ヴィエイラはチーム一丸となることの重要性を何度も繰り返した【写真:Getty Images】

 シーズン開幕から斬新な戦術で注目を集め、攻撃的なサッカーでJリーグにおいて異質な存在だったチームが、今さら精神論なのかという疑問も湧くだろう。だが、このような苦境に立たされると、本当の意味でメンタル的な側面がピッチ上に大きな影響を及ぼすケースも数多く見てきた。

 浦和戦を終えて、最後にロッカールームから出てきたウーゴ・ヴィエイラは、「(今日の敗戦は)本当に悔しい。僕のサッカー人生では優勝争いをすることが多く、残留争いをするようなチームを渡り歩くことはなかった。でも、今はこういう状況に置かれているので、チーム一丸となって戦っていかなければならないと思う」と厳しい表情で語った。

 そのうえで、「一緒に戦わなければいけないし、相手チームより走らなければいけない。こんな偉大なクラブがこのような状況に置かれるのはおかしい。こんなにも素晴らしいサポーターがいて、この状況を抜け出さなければ、サポーターのために、マリノスのためにならない。もっともっと、一丸となって戦っていかなければいけない。一丸になれるかどうかではなく、ならなければいけない。僕たちはプロなので、難しいときこそ一体感を出して、一丸となって戦っていかなければいけない」と強調した。

 勝利を取り戻し、最悪の事態を免れるためにはチーム全体が「一丸」になる必要があるのは間違いない。今になって戦い方、指揮官の言う「信念」を曲げる必要はなく、何かを大きく変えるだけの時間も残されていない。

 だからこそ、一体感を醸成し、全員が同じ意志のもとで戦う必要がある。そのためにはポステコグルー監督も、自分の主張を一方的に押しつけるようなアプローチを変えていかなければならないだろう。選手たちに歩み寄り、戦術的なベースを大きく変えることなく最善の航路へ舵を切れなければ、その先にあるのは断崖絶壁だ。引き返せなくなるところまで進んでしまってからでは遅い。

 もちろん選手たちも、プロフェッショナルとして振る舞う必要がある。どんな主張があったとしても、監督とのコミュニケーションの中で勝つために最善な妥協点を見つけなければいけないだろうし、これ以上不満を公に口にすべきではない。

 どんな些細なことでも言葉が一人歩きしてしまえば、何も起こっていないところで、「何か」が起こっているかのように伝わってしまう可能性もある。外部からの影響に気を使わなければいけなくなれば、ピッチ上への集中が削がれてしまう。一瞬も気の抜けない今のような状況で、それだけは避けなければならない。

 選手と指揮官がお互いの認識を擦り合わせ、最適なバランスを見つけ、一丸となれなければ同じ失敗を繰り返すだけだ。リーグ戦は残り8試合。今こそ、変えるべきことと変えるべきでないことをしっかりと見極める時。浦和戦の前半、立て続けに決定機が生まれたのは、これまでに積み上げてきたものが間違っていなかったことの証明だという事実も忘れてはならない。

 シーズンを通しての成長の跡ははっきりと見える。選手も監督も、少しでも道を誤れば半年以上かけて地道に身につけてきた努力の成果は無駄になり、その先には「降格」の2文字が現実のものとして浮かび上がってきてしまう。

(取材・文:舩木渉)

※配信当初、一部内容に誤りがあり訂正致しました。関係者の皆様にお詫び申し上げます。

【了】

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