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Jリーグ 5年前

中村憲剛は38歳でも代役不在。フロンターレ連覇を導いた起用法、誰の目にも明らかな進化

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「フロンターレ対策」からチームを救ったのは…

 フロンターレが今季から取り入れた新たな戦い方と中村の起用法は、密接にリンクしていた。常に先行を許していた鹿島に勝ち点72で並び、得失点差で奇跡の大逆転劇を成就させた昨季の最終節。クラブの悲願だった初タイトルをJ1制覇という形で手繰り寄せた瞬間から、追う立場ではなく追われる立場となる次のシーズンの戦いへ向けて、中村は頭脳をフル回転させてきた。

「昨季で自分たちのやるべきことが、ある程度見えたと思っている。自分たちがやるべきことをやれば違う次元にいけるサッカーになると、相手に何もさせせずに自分たちがひたすらボールをもって攻めるサッカーができると僕たちは思っているので。そのためには自分たち一人ひとりの質を上げることでグループとしても、そしてチームとしても質を上げていくことができた。

そうした質を追求する作業を、麻生グラウンドにおける日々の練習で真摯に取り組んできた結果として、誰が出ても結果を残せるチームになった。もちろん相手もあることなので、結果には勝ち、負け、引き分けがありますけど、それを目指せる環境にいまフロンターレがあって、なおかつ連覇も達成できたことで、グラウンドは嘘をつかないと改めて思いました」

 ディフェンディングチャンピオンとして迎えた今季。予想していた通り、対戦チームの多くはフロンターレ対策を練って臨んできた。パスワークに長けたフロンターレに主導権を握られ、試合を圧倒的に支配される展開を覚悟のうえで、自陣に強固なブロックを形成する。

 ゴールをこじ開けるためには、フロンターレもどこかで勝負のパスを入れて、相手の守備ブロックに楔を打ち込まなければいけない。その瞬間に狙いを定めてボールを奪い、乾坤一擲のカウンターを仕掛ける。肉を切らせて骨を断つような相手の戦い方の前に、ロシアワールドカップで中断するまでに4つの黒星を喫した。

 陥りかけた苦境からチームを救い出したのが、中村が積極果敢に仕掛けたハイプレスだった。相手ボールになった瞬間に、小林悠と2トップになる形で相手のボールホルダーとの距離を瞬く間に詰める。文字通りの鬼気迫るアプローチ。たとえ中村のところでボールを奪えなくても、小林や後続の阿部浩之や家長昭博、大島僚太と守田英正のダブルボランチ、両サイドバックまでが連動して高い位置でボールを奪い返す。

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