途中交代が続いていたことの意味
まるで判を押したかのように、後半の攻防が中盤から終盤に差しかかる時間帯になると、選手交代を告げるボードに「14」の数字が灯った。川崎フロンターレを率いる鬼木達監督は今夏の戦いで、トップ下として先発させていた大黒柱、中村憲剛をベンチへ下げる采配を振るい続けた。
ロシアワールドカップによる中断期間が明けてJ1が再開された7月18日の北海道コンサドーレ札幌戦から、9月1日のガンバ大阪戦までの9試合。最短で66分間、最長で85分間、そして平均76分間というプレー時間には、明確な意図が込められていた。
ヴェルディ川崎、鹿島アントラーズ、横浜F・マリノス、サンフレッチェ広島に続く史上5チーム目のJ1連覇を果たした、10日のセレッソ大阪との明治安田生命J1リーグ第32節後のひとコマ。敵地ヤンマースタジアム長居の取材エリアに姿を現した中村は「暑かったからね」と、キックオフ前から途中交代が織り込み済みだった夏場の約1ヶ月半を振り返った。
「夏場は70分くらいで代えてもらっていたので、そこで休ませてもらったことが後半戦になって、自分のコンディション的にも生きていた。その点ではオニさん(鬼木監督)にも、コーチングスタッフにも、そしてチームメイトにも本当に感謝している。とにかく、やりがいしか感じない職場だと思っています」
機は熟したとばかりに、国際Aマッチウィークによる中断が明けた9月15日の札幌戦以降の8試合で、中村は6度のフル出場を果たしている。78分でMF登里享平と代わった名古屋グランパス戦、80分でMF鈴木雄斗と交代した柏レイソル戦は、ともにリードを広げた状況を受けての采配だった。
そして、中村がフル稼働するようになった8試合でフロンターレは5勝2分け1敗と、それまで右肩上がりで伸ばしてきた勢いをさらに加速させる。前半戦で最大13ポイントも離されていたサンフレッチェ広島の背中をとらえ、一気に抜き去り、再逆転が不可能な勝ち点差にまで広げて歓喜の雄叫びをあげた。