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Jリーグ 5年前

中村憲剛は38歳でも代役不在。フロンターレ連覇を導いた起用法、誰の目にも明らかな進化

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「これまで以上に自分を追求できた1年だった」(中村)

中村憲剛
「これまで以上に自分を追求できた1年だった」と中村憲剛は話す【写真:Getty Images】

 前出の9月15日の札幌戦。28分に生まれた家長の先制点は、中村のボール奪取から生まれている。自陣の中央でパスを受け、ボールを前へ運ぼうとした札幌のボランチ宮澤裕樹に狙いを定め、ボールがわずかに足から離れた瞬間にプレスをかける。

 ボールを奪うや、電光石火のショートカウンターを発動。パスを受けた家長が、右サイドから右足を一閃する。この一撃はGKク・ソンユンに止められるも、こぼれ球に今度は利き足の左足を合わせた。フロンターレで力強く脈打ち始めた戦い方を、中村はこう説明したことがある。

「自分たちがボールを握りながら攻めて、相手がボールを取った瞬間に激しく奪い返しにいく。もちろん速攻を狙いますけど、それが無理ならば相手を敵陣へ押し返して、自分たちが奥まで進みながらちょっとペースダウンして、休む時間を意図的に作る。そこで取られても深いところでまた奪い返す。それが無理な状況なら自分たちが一度戻って作り直す、というところのメリハリはかなり取れてきていると思う」

 表現が正しいかどうかはわからないが、結果として相手を敵陣に封じ込めたまま「蹂躙」するサッカーを貫ける。ただ単にボールを握るだけではなく、ボールを握り倒す。究極のポゼッションサッカーを可能にするためにも、ハイプレスの「一の矢」役には豊富な経験から相手の出方を瞬時に読み、間合いを詰める作業が連続して求められる。自分しかいないと、中村自身が誰よりも感じていた。

「このチームでやるべきことは攻撃以上に、自分が常にスイッチャーになること。自分のなかでもそれがすべてと言っても過言ではないと思っているし、自分の成長にももちろんつながっている。後ろがボールを取ってくれて、ショートカウンターで点が取れる楽しさもこの年になって初めて覚えている。逆にそれができなくなったら、おそらく試合に出してもらえない。そういう集団になってきた、とすごく感じている。頼もしいチームメイトのなかで、これまで以上に自分を追求できた1年だった」

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