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Jリーグ 5年前

川崎F・家長昭博による“無双のシーズン”への分岐点とは? 32歳で頂点に辿り着いた男の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

中村憲剛が語る家長の変化

中村憲剛
川崎Fの中村憲剛は家長の変化について話している【写真:Getty Images】

 チームメイトたちだけでなく、鬼木達監督以下のコーチングスタッフ、クラブ関係者、そしてファンやサポーターが待って、待って、待ち焦がれてきた移籍後初ゴール。シーズンの3分の2に差しかかった段階で手繰り寄せた歓喜のシーンを、家長は照れくさそうにこう振り返っている。

「僕、等々力での先発が初めてやったんで。それくらい試合に出ていなかった、という問題のほうが自分のなかでは大きかった」

 アントラーズ戦以降の軌跡を見れば、フロンターレのなかで家長が必要不可欠な存在になっていったことがわかる。基本ポジションは中盤の右サイドながら、前線のあらゆるポジションに文字通り神出鬼没で現れてはボールに絡み、フロンターレの看板である攻撃力にさらなる「違い」をもたらす。

「いや、まあ結果としてはそうなりますね」

 初ゴールが覚醒への起爆剤となったのでは、という問いを家長は苦笑いを浮かべながら肯定した。胸中に抱き続けてきた自信が、会心の笑顔を浮かべさせなかったのだろう。それでも、中盤でともにプレーしてきたバンディエラ、中村憲剛の言葉を時系列でたどれば、家長が遂げてきた変化が伝わってくる。

「まあ徐々に、ですね。これからだと思います。アキ(家長)のポテンシャルの高さは疑いようがないし、アキがチームにフィットするのを待てる余裕がいまのウチにはあるので。そういった状況で僕はアキの特徴を引き出してあげたいし、周りも特徴を感じてあげられるようになればいいんじゃないかな」

 戦列に復帰したレフティーが苦闘していた時期にこう語っていた中村は、家長の初ゴールでダメを押し、快勝したアントラーズ戦後には笑顔とともに言葉を弾ませている。

「(大島)僚太がいて、(エドゥアルド・)ネットがいて、阿部(浩之)ちゃんがいると僕は楽ですよ。相手のマークを自分に引きつけるだけでいいから。加えて、アキはボールをもてる。2人でこのくらいの距離でプレーできる選手は、そんなに多くない。その意味では、やっていて楽しくなってきたかな」

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