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Jリーグ 5年前

川崎F・家長昭博による“無双のシーズン”への分岐点とは? 32歳で頂点に辿り着いた男の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

数字が物語る無双ぶり

 このくらいと言いながら、中村は1メートルほど両手を広げた。FW大久保嘉人がFC東京へ移籍したなかで、以心伝心でボールを操れるチームメイトがようやく現れたことへの喜びは、クラブ悲願の初タイトルをJ1制覇という形で成就させた、昨年12月の最終節における奇跡の大逆転劇への呼び水になった。

 人目をはばかることなく号泣してから1年とちょっと。2016シーズンの自分自身、昨シーズンの小林に続いて、Jリーグ史上で初めてとなる同一チームから3年連続のMVPに輝いた家長を、ともにベストイレブンに選出された中村は、これ以上はない言葉で賞賛している。

「加入当初はウチに合わせようという気持ちがあったはずだけど、それよりも自分の間というか、やりたいことをやり、僕たちもそれに合わせることで、どんどんアキもよくなっていった。去年の夏以降は苦しいときに突破口を開いたのがアキの左足でしたし、身体を張って時間を作ってくれたのもアキでした。

 最初は数字に直結するプレーを意識していなかったかもしれないけど、意識し始めてからはものすごく怖い選手になり、同時にチームをけん引する存在になった。隣でプレーすることが多いけど、こんなに頼もしい選手は多くない。(MVPを)取ってもおかしくないと僕は思っていました」

 図らずも中村も「去年の夏」と言及したように、移籍後初ゴールがさまざまな意味でターニングポイントになっていることがわかる。そして、右肩上がりに転じた成長曲線を攻撃陣では最多となる出場32試合、プレー時間2745分に激増させた今シーズン。家長がピッチ上で発揮した無双ぶりは数字が物語っている。

 J1のMVP及びベストイレブンは、18クラブの監督、シーズンで17試合以上に出場した全選手による互選が基になる。ポジションごとに投票数の多い30人が優秀選手賞に選出されたなかで、家長は最多となる177票を獲得。それだけ味方には安心感を、相手チームに脅威を与えた証になる。

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