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Jリーグ 5年前

川崎F・家長昭博による“無双のシーズン”への分岐点とは? 32歳で頂点に辿り着いた男の軌跡

text by 藤江直人 photo by Getty Images

次なる目標はアジア

家長昭博
今季のJリーグMVPに選出された家長。次なる目標はアジアの舞台で川崎Fの強さを証明することだと話す【写真:Getty Images】

 加えて、フロンターレからは実に10人が優秀選手賞に名前を連ねた。そして、村井満チェアマン、原博実副理事長、J1クラブの実行委員(代表取締役)らで構成される選考委員会が選出するベストイレブンには、1994シーズンのヴェルディ川崎、2002シーズンのジュビロ磐田に並ぶ、史上最多の7人がフロンターレから選出されている。

「日本を代表する選手たちがいるなかで、自分が挑戦したいと思って飛び込んだ」

 成長の二文字をフロンターレに求めたことを再び強調した家長は、Jリーグアウォーズ後の合同記者会見で、2年前のオフに下した決断が正しかったと胸を張った。

「全員の志が高く、選手一人ひとりの向上心が高いチーム。自分が想像している以上に多くの刺激をもらえているし、みんなのおかげで僕自身も人としても選手としても成長できた。このチームに入って、本当によかったと思っている」

 ジュニアユースから心技体を磨いたガンバ大阪を皮切りに、大分トリニータ、セレッソ大阪、ラ・リーガ1部のマジョルカ、韓国Kリーグの蔚山現代、残留争いの渦中にいた古巣ガンバ、2部に降格していたマジョルカ、そしてアルディージャをへて続けてきた挑戦の旅路。チームと個人で最高のタイトルを取っても、もちろん終着点にはならない。

「日本では川崎フロンターレはみんなに認められている存在だと思いますが、アジアではまだまだだと思うので。来年はアジアにしっかりと、川崎のサッカーが強くて勝てると見せつけたい」

 AFCチャンピオンズリーグを振り返れば、昨シーズンは準々決勝で浦和レッズの前に、今シーズンはグループリーグで敗退している。国内のカップ戦ではYBCルヴァンカップ、天皇杯全日本サッカー選手権ともにまだ手にしていない。何よりも2007/09シーズンのアントラーズしか達成していない、リーグ戦3連覇への挑戦権をもっているのはフロンターレだけだ。

 次なるタイトルへ近づくごとに自信が膨らみ、成長を遂げる自分がいることを信じながら、32歳にして遅咲きの花を咲かせた家長は、疲れ切った心と体を癒すためにしばしのオフに入る。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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