随所で好プレーも遠い1点
5-3-2の布陣を採り、徹底した日本対策を講じてきたカタール相手に前からのプレスがはまらず、ボールの奪いどころを見出せず、開始27分間で2点を失う苦戦を強いられた日本。
8年ぶり5度目の優勝に王手をかけていたAFCアジアカップ2019の決勝で前半から予期せぬ劣勢を強いられたことは、チームに重くのしかかった。後半から反撃に転じ、敵を追い込んだが、今大会6戦無失点のカタール守備陣はどこまでも固い。選手たちからも焦燥感がにじみ出ていた。
その堅牢な守備ブロックを打ち破るシーンが後半24分にようやく訪れる。酒井宏樹の横パスを塩谷司がタテに入れ、DFアルハジリを背負った大迫勇也がワンタッチで落とした瞬間、背番号9をつける男・南野拓実が鋭く反応。内向きに反転してGKアルシーブをうまく外しながら浮き球の右足シュートを蹴り込んだのだ。
南野にとっては喉から手が出るほど欲しかった今大会初ゴール。28日の準決勝・イラン戦で3点をお膳立てするなど日本の勝利に貢献し続けてきたものの、自身のゴールだけは遠かった。
「ここまで苦しんでいたわけではない。チームが勝つことが一番だし、そこに貢献している自負はあった」とは言うものの、得点を決めていた大迫、堂安律、原口元気ら他のアタッカー陣に引け目を感じた部分も少なからずあっただろう。決勝での一撃は募らせてきた悔しさと不完全燃焼感を払拭するものになるはずだった。
「1点が入った時は時間帯も悪くなかったし、チーム後半の戦い方だったらチャンスはあるなと思った」と南野自身も逆転へ大いなる希望を抱いた。実際、そこからの猛攻は凄まく、堂安や途中出場の武藤嘉紀が貪欲に相手ゴールに詰め寄った。が、後半38分にVAR判定で吉田麻也のハンドを取られ、献上したPKで3点目を失った時点で、無情にも勝利の可能性は潰えた。
結局、乾貴士との交代を強いられた南野はベンチでタイムアップの笛を聞くことになった。彼はただ1人、ピッチ上に膝を抱え込んで座り込み、しばらく動けなかった。