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日本代表 5年前

南野拓実、未来へ繋げるべき決勝の一撃。苦悩と充実…新たなエースが挑んだアジアカップ

text by 元川悦子 photo by Getty Images

空砲に虚しさも…1点が持つ意味

 試合後のミックスゾーンでも「運も実力のうちはと言いますけど、悔しいですね」と失望感を露わにする。カタールに一矢報いた決勝での得点に関しても「あのゴールは意味、ないっすね。優勝しないと意味ないと僕は思ってたし、それにつながるゴールだったら自分にとって意味があったと思いますけど、勝利につながっていない。悔しいですね」と空砲になった虚しさを吐露した。

 それでも1点は1点だ。このゴールがなければ、南野がA代表の主力として初参戦したこの大会はもっと納得できないものになっていたに違いない。

 森保一監督体制発足後の2018年5戦で4得点を挙げた背番号9には、アジアカップでのゴールラッシュが大いに期待された。

「チームのために全力を尽くしたい。個人の賞とかはステップアップは優勝したうえでの話」と本人はあくまで慎重なスタンスを崩さなかったが、もともと上昇志向の強い男である。大仕事をして成り上がろうという野心は抱いていたはずだ。

 しかしながら、9日の初戦・トルクメニスタン戦からタイトなマークを受けて親善試合のような自由を与えてもらえず、ゴール前での余裕を失っていく。悪循環をより加速させたのが、13日の第2戦・オマーン戦だ。前半から鋭い動き出しで相手の背後を取るプレーを連発しながら、4度の決定機を逃したことで、点取り屋のリズムが狂った。

「自分としてはシュートまでの最後のファーストタッチも悪い感じはしていなくて、少しシュートを浮かせるとか、GKをギリギリまで見るとか、そのへんの余裕は少しなかったのかと。でも気持ち的には何も問題ないし、入るまでやってやろうと思ってるんで、次は改善していきたいです」

 こう語る本人は懸命に前を向こうとしたが、決勝トーナメント突入後も決めきれない時間が続く。21日のサウジアラビア戦では、後半立ち上がり早々にゴール前でフリーになった場面でボールコントロールがズレてハンドを取られ、24日のベトナム戦でも前半終了間際のGKとの1対1を防がれるなど、どうしてもゴールが遠いまま。

 かつて本田圭佑も「ゴールはケチャップみたいなもの。出ない時は出ないけど、出るときはドバドバ出る」と語ったことがあったが、南野も点取り屋特有のスランプに陥ったのは事実だろう。

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