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Jリーグ 5年前

オールドファン胸熱の親子鷹。遺伝する才能はJにも、神戸GK前川黛也は近未来の日本代表候補【西部の目】

シリーズ:西部の目 text by 西部謙司 photo by Getty Images

MFのようなSB

 今季、徳島ヴォルティスから横浜F・マリノスに加入した広瀬陸斗も二代目である。父は浦和レッズでプレーしたMF広瀬治、セットプレーの名手としてならした。

 浦和レッズのジュニアユース、ユースを経て2014年に水戸ホーリーホックでプロデビュー。15年からは徳島でプレーしていた。横浜FMでは開幕からレギュラーの座をつかみ、主に右サイドバックでプレーしている。「主に」というのは左サイドバックでの起用もあったからではなく、チーム自体がポジショニングに流動性があるスタイルということもあり、広瀬もいろんな場所に移動しながらプレーしているからだ。

「徳島でも動き方は流動的だったので違和感なくやれています。自分はユース時代から自由にやらせてもらっていて、いろいろなポジションを経験したことも良かったのかしれない」(広瀬陸斗)

 常に相手からズレたポジションをとり、なおかつ味方とレーンが重ならないようにする。原則はそんなに複雑ではないが、適切な距離感を保つセンスは問われる。そのあたりを自然にやれるから重用されているのだろう。テクニックもビジョンもあり、サイドバックというよりMFのプレースタイルだ。

 ラウドルップのように親子兄弟皆そっくりの場合もあるが、親子といわれて「そういえば似ているかな」という程度のこともある。むしろそちらのほうが多いかもしれない。ただ、全然似ていないというケースはあまりない気がする。およそどの親子も、手取り足取り教えていたという話は聞かず、「小さいときに蹴り方ぐらい教えた気がする」というのがほとんどなのだが、なぜか似てしまうのだから遺伝子恐るべしだ。

 ヨハン・クライフの息子ジョルディ・クライフもオランダ代表に選ばれ、バルセロナやマンチェスター・ユナイテッドでプレーしたぐらいの選手だったが、偉大な父とは比較にはならない。それでも、ふとしたプレーに父親の面影を見てしまう。息子にとっては迷惑な話かもしれない。ただ、違う人間、違う選手なのは承知しているが、それもオールドファンの密かな愉しみではあるのだ。

(取材・文:西部謙司)

【了】

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