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Jリーグ 5年前

平成から令和へ、マリノス対鹿島は時代の転換点。27年目の激闘、それぞれが思い描く「家」の形

text by 舩木渉 photo by Getty Images

ボールを追いかけ、削られたHP

伊藤翔
鹿島のFW伊藤翔は移籍後初の古巣戦に臨んだが見せ場なく終わった【写真:Getty Images】

 鹿島の大岩剛監督は試合後の記者会見で「先制をして、自分たちのやることを非常によくできていたんですけど、先制したことで意識が少し後ろになってしまったのかなと。後半、ギアを入れてもう1つ(追加点を)取るんだという意識でいたんですけど、ピッチの中で前に出ていく意識がなかなか持てなかった」と悔やんだ。早い時間帯での先制点が、有利になると思いきや逆に足かせになってしまっていたのだった。

 前半から意識が後ろ向きになり、ボールを追い続けた結果、今度はボールを奪っても攻撃に出ていくエネルギーが残っておらず、あっさりと失って再び守る。その繰り返しがジャブのようにダメージとして蓄積され、鹿島のHPが削られていった。

「こっちもそうだし、相手もそうなんですけど、1人出ていけば空くし、埋めれば手前のスペースが空くし、入れ替わり立ち替わりというのはあるんですけど、そういう意味でうちらは守備に関してはズレというか、ちょっとずつ遅くなっていったんで。なんとなく寄せている風にはしているけど、全然相手にはプレッシャーがかかっていないという。前半はガッツリいけていたから向こうもバックパスをしてみたりとか、ゆっくり攻めてみたりということもしていたけど、だからそこは自分たちの強度が落ちたということでしょうね」

 伊藤は極めて冷静に試合展開の移り変わりを分析していた。ビルドアップの拙さもあって、前線で待っていても自分のところにはほとんどボールがこない。半ば偶発的にカウンターでチャンスは作れるものの、それが再現性のある攻撃につながっていかないことにもどかしさを感じながらの90分間だった。

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