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日本代表 5年前

日本代表の3バック、なぜ選手は混乱したのか。伸びしろは“特殊型”と“可変延長型”にあり

text by 河治良幸 photo by Getty Images

“特殊型”か“可変延長型”か

 初めて採用したのだから違和感や確認事項が多くなるのは当たり前という見解もあるだろうが、意図が明確に共有されないまま4バックと3バックを使い分けようとしても、違和感を取り除けないまま公式戦で採用に踏み切れない可能性が高い。

 五輪代表で継続的に使われていることもあり、この試合限りで封印することはないだろうが、3バックをベースではなくオプションと考えているのであれば、使用の意図をより明確化し、使うシチュエーションを限定的にする方が、混乱が少なく効果的かもしれない。

 つまり、臨機応変に3バックと4バックを使い分けるのではなく、ベースはあくまで4バックで、その中で可変させる対応力をさらに伸ばした上で、”特殊型”の攻撃的オプション”としてすり込んでしまう方法だ。

 例えば3バックを使うときは酒井宏樹をサイドバックから3バック右にずらし、右ウィングバックはサイドハーフの選手がスライド、逆に左ウィングバックには原口元気を投入して攻撃力を増やすといった攻守のバランスも変えるような采配にマッチさせてしまう。あるいは本当に点が欲しい時にセンターバックの一人が前線に上がるパワープレーで、左右のサイドバックが3バックのストッパー化をする形なども意図が明確になる。

 4バックの中で可変性が高まっているのであれば、なおさらスタートポジションにわざわざ3バックを取り入れる必要性は強くない。あえて特殊型ではない形で3バックと4バックを使い分けたいのであれば、本職のセンターバックを3人並べるのではなく、イングランド代表のカイル・ウォーカーのように右サイドバックも3バックの右ストッパーもできるような選手を想定しておいて、3バックを使うときは酒井宏樹がスライドするという約束事にしておけば、はまらない時にすぐ4バックに戻すことも可能だ。

 4バックが中盤にアンカーを置く4-3-3であれば冨安健洋を3バックの中央で起用した上で、状況や時間帯に応じてアンカーに上げるという方法も同じフォーメーション内での可変から一歩進んだ使い分けのプランとして有効かもしれない。

 使い方を限定して”特殊型”として伸ばして行くのか、同じメンバーで3バックと4バックを使い分けられる”可変延長型”か、何にしても意図をもっと明確にしていかないと、”ウィングバックが幅を取る”だけでは限られた代表期間の中で違和感を取り除くことは難しいだろう。

 もしかしたら3バックに慣れている五輪世代の台頭で多少解決できる部分はあるかもしれないが、採用するならプランニングの明確化をセットにして行くことを求めたい。

(取材・文:河治良幸)

【了】

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