エスパルスFWドウグラスが放つ神々しさ。パワフルなのに力みがないストライカーの資質【西部の目】

清水エスパルスのFWドウグラスは、今季のJ1リーグで2位タイとなる13得点をここまで決めている。2010年7月に来日して、Jリーグ通算61得点をマークするストライカーが、まるで「神様」のような雰囲気を醸し出す理由を考えてみたい。(文:西部謙司)

2019年10月25日(Fri)10時00分配信

シリーズ:西部の目
text by 西部謙司 photo Getty Images
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神々しいストライカー

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清水エスパルスのFWドウグラス【写真:Getty Images】

 なぜか神々しく見える選手がいる。たんに上手いとか凄いというのではなく、威厳というか品格というか、ときに後光が差しているような気がするプレーヤーだ。そう見えるのはまったく個人的な印象なのだが、何らかの理由はあるのだと思う。

 イラクのエースだったアーメド・ラディは神々しかった。1994年ワールドカップ・アジア最終予選で日本とも対戦したイラクのFWといえばわかりやすいだろう。日本にとって“ドーハの悲劇”になったこの試合でもラディは1点決めている。

 ラディはどんな形でも得点できた。空中戦は強烈で、足下も巧み。ドリブルシュートもFKもある。1986年ワールドカップではイラク唯一のゴールを決め、1988年にはアジア年間最優秀選手に選出された。引退後は監督、イラク協会会長を務め、現在は政治家だそうだ。

 Jリーグでは清水エスパルスのドウグラスが神々しい。第29節時点では13ゴールでディエゴ・オリヴェイラ(FC東京)と並ぶリーグ2位タイ(1位は横浜F・マリノスのマルコス・ジュニオールの14点)。序盤は出遅れたが、調子が上向くとゴールを量産。チームが低迷する中でもコンスタントに得点し続けていた。

 どんな形でも点をとる。ヘディングは強力、こぼれ球を強引にでも枠へ持っていく技術とキレがあり、1対1でぶち抜いてのゴールもある。得点だけでなくラストパスの能力も高く、カウンターの起点にもなれる。

 ラディとの共通項は長身、万能型。そんなに動き回るタイプではない。どっしり構えていて、それがまた余裕があるように見えるのかもしれない。動かないだけなら全然神々しくはないのだが、ここという場面で必ず活躍するから後光が差して見えるわけだ。

6年目に突如ブレイク

 来日したのは2010年7月、J2の徳島ヴォルティスに期限付き移籍で加入している。ブラジルでは芽が出ず、日本に新天地を求めたわけだが、当初はあまり活躍できなかった。2013年の昇格プレーオフで勝利に貢献して完全移籍となる。しかし、結果を出すことができず、新たに外国籍選手が加入すると出番を失った。2014年に期限付き移籍した京都サンガでも負傷もあって5得点に終わっている。

 ところが、2015年にサンフレッチェ広島に移籍するや21ゴールの大活躍。大久保嘉人(川崎フロンターレ)に次ぐ2番目の得点数だった。J2で燻っていたドウグラスを獲得した広島の慧眼にも驚くが、それにしてもいきなりの大ブレイクである。独力でのゴールではなく、パスワークの中でゴール前へ入って行くほうが生きるタイプだったのだ。このシーズンの活躍でアル・アイン(UAE)への移籍が決まり、アル・アインで2シーズン、その後にトルコのアランヤスポルを経てJ1へ戻ってきた。

 ブレイクした広島ではシャドーのポジションだったが、清水ではトップで起用されている。試合の流れで少し引くこともあるが、基本的には最前線だ。

ボールの軌道を読む力

 飛んでくるボールの軌道を読むのが速い。動体視力がいいのか、落下点を正確に計測している。かつて広島でプレーしたイワン・ハシェックがそうだったのだが、味方が蹴った瞬間にボールの軌道を読めるのだろう。その理由をハシェックは説明できなかった。たぶん生まれつきの能力なのだ。

 ドウグラスはヘディングもボレーも非常に上手く、胸のトラップは吸い付くように収まる。こぼれ球への反応も速い。これらも眼がいいからではないかと思う。ストライカーだがエゴイストではなく、良いポジションに味方がいれば的確に使う。FKも得意で大きく曲げて落としたかと思えば、ジャンプする壁の下を抜くシュートも決めていて、流れの中でのプレーと同じで決め打ち感がない。

 状況に合わせて柔軟に対応している。パワフルなのに常に少し脱力していて力みがない。そして姿勢がいい。これらが総合的に品格のようなものを醸し出しているのかもしれない。

 ウィキペディアを見たら、愛称のところに「神様」と書いてあった。

(文:西部謙司)

【了】

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