元日本代表が東京都2部移籍を選んだ理由。阿部翔平、35歳で踏み出した新たなキャリアへの一歩【インタビュー前編】

Jリーグ通算355試合出場を誇り、日本代表招集歴も持つDF阿部翔平は35歳で大きな決断を下した。2019年、J2のヴァンフォーレ甲府から6カテゴリ下の東京都2部リーグ所属のTOKYO CITY F.C.への移籍である。J1優勝経験のある左サイドのスペシャリストはなぜ社会人サッカーへの参戦を決めたのか、そして新天地でどんなことを考え、何を得たのか。ロングインタビューを前後編に分けてお届けする。(取材・文:舩木渉、取材日:2019年12月29日)

2020年01月11日(Sat)10時00分配信

text by 舩木渉 photo TOKYO CITY F.C.
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都2部移籍の理由は「面白そうだから」

阿部翔平
元日本代表のDF阿部翔平は2019年から東京都2部リーグのTOKYO CITY F.C.でプレーしている【写真提供:TOKYO CITY F.C.】

――TOKYO CITY F.C.に移籍して1年目が終わりました。初めての地域リーグという、Jリーグとは全く違う環境での新しい挑戦となった2019年シーズンをどう振り返りますか?

「サッカーを新しい角度から、これまでとは違う見方ができた1年だったと思います。個人的には結果は優勝して東京都リーグ1部昇格できなくて残念でしたけど、サッカーをちゃんと出来たかなと思うし、いろいろなことを体験できて自分にとってプラスになった1年かなと思っています」

――J2からカテゴリを6つ落とすというのは、阿部選手にとって大きな挑戦だったと思います。もちろん単純にサッカーのレベルだけでなく、様々な面で変化を受け入れなければならない難しさもあったのではないでしょうか。

「TOKYO CITY F.C.に移籍した決め手は『面白そうだから』という単純なものでした。名古屋グランパスからヴァンフォーレ甲府に移籍した時も、ジェフユナイテッド千葉に移籍した時も同じでしたしね。環境が全然違って専用のグラウンドもないし、予算的にもかなり厳しい中でやっているクラブの一部になって力添えができれば良いなって思っていました。

今回の移籍もその延長線上にあって、動機も昔からずっと変わっていません。『何でそんなところに行くの?』と言われることが多いですけど、結局は自分が楽しそうだから、面白そうだからと思えるから、直感みたいなとこに尽きるんです。

一方で選手として上を目指すのはもう難しい年齢になったと思うし、多くの人が『サッカーのために』と言いますけど、僕はいろいろ楽しいことをしたいと思っていました。働きながらサッカーをしている選手たちも、やっぱり絶対に上手くなりたいという気持ちが強いんだろうなとも思っていたし、そういう選手たちにもサッカーを教えてあげたいなというのもありました。そういうことを通して新しい視点を見つけて、自分のプラスなればいいかなと」

「毎日サッカーをしなくても下手にはならない」

阿部翔平
阿部翔平の最大の武器である高精度の左足キックは36歳になっても健在【写真提供:TOKYO CITY F.C.】

――「面白そう」という加入前のイメージと、実際に東京都2部リーグのクラブに入ってみて感じたことにギャップはありましたか?

「あんまりよくない話をすると、入る前はみんなのレベルがそんなに高くないんじゃないかと思っていました。でも、個々がどこかに長所を持っていて、『そういうことができるんだ』という新しい発見はありました。

ただ、選手それぞれの意識に違いはあったと思います。プロはお金をもらっているので、ちゃんとやらなきゃいけないですけど、アマチュアはそうじゃない。自分で高めていきたい選手はそうするし、そうでない選手もいる。いろいろなスタイルでサッカーと向き合いながらやっているんだなというのは感じました」

――アマチュアクラブということもあり、チーム練習でボールを使えるのは週に2、3回で、常にフルピッチでやれる環境もなく、毎回の活動に集まる人数まちまちという状況です。その中で、阿部選手自身がサッカーに向き合う姿勢だったり調整方法だったり、Jリーグ時代から変わったところはありましたか?

「毎日サッカーができるかできないかというのは全然違いますね。でも、極論を言えば毎日サッカーをしなくても下手にはならないと思っているんです。あんまり良くはないですけど、体のコンディションさえ保っていれば、別に1週間丸々ボールを蹴らなくたって大丈夫かもしれない。

僕としては毎日練習がないことで逆にいろいろな挑戦ができた部分もあります。プロになると栄養や食事量を管理されているので、筋肉量を落としてはダメとと言われれば食事量を減らせないし、運動量も確保しなきゃいけないですけど、今年は食事量をちょっと減らして体重を少し落としてみたり。

プロはどうしても全てが管理されているので、日々やることが作業みたいになってきてしまうので、自分で主体性を持って考えて調整することがなくなってしまう傾向もあります。でも全員に同じやり方が合っているわけではないし、自分で考えることがなくなってはダメですから。プレーで筋肉系の怪我のリスクを減らすような努力をしたら、今年も怪我はしなかったし、新しく挑戦できたことに関してはいい方向に出てるんじゃないかなと思います」

都リーグでの2年目へ「新しいことへの欲がすごくある」

阿部翔平
阿部翔平は本職の左サイドバックに加え、センターバックにも挑戦して若い選手の多いチームを引っ張った【写真提供:TOKYO CITY F.C.】

――東京都2部リーグのサッカーはいかがでしたか? 天然芝で試合をすることは珍しいですし、人工芝や、時には土のピッチもあります。チーム練習もままならない中で、勝利のためのトライをし続けなければならない難しさもあったと思います。

「チームとして戦術を熟成させることはできなかったと感じています。何となく頭ではわかっているけど、まだ体で表現できていない状態がずっと続いてました。最短でJリーグを目指すという目標があるから、勝たなければいけない焦りみたいなものが常々あった。その目標と現実のギャップみたいなものは悩んだところではあると思います」

――そういう困難を抱えていても勝っていかないければいけないのは、Jリーグでも都リーグでも変わらないですが、相手のレベルや戦い方は1シーズンを終えてみてどう感じましたか?

「上位と下位で振れ幅は大きかったと思うし、走り込んでいるチームは安定して戦えている印象です。そうなってくると、大学生が強くなってくるのかなと思います。自分たちがその中で勝っていくためには、やっぱり走っていかなきゃいけないですけど、アマチュアなので練習で走るというより、個人の努力に任せる部分になってきますね」

――チーム練習の回数が限られている中で、個人が自分のできる範囲でどれだけの努力をしているかが結果につながってくるのもアマチュアの難しさなのではないかと思います。

「自分で走っている選手は走っているし、そうじゃない選手は試合での動きや体型を見ればなんとなくはわかります。だからといって彼らはプロではないし、『お前、走れよ』と強制するのもそれはそれで違うなというのも感じるところです。

ただ、アマチュアでもプロでも結局やるべきことをやっていない選手は自然に淘汰されていってしまうのは変わらない。自分の熱量をちゃんと表現できたうえで、その熱量がこのチームの基準に届くのか、届かないのかが重要ですし、その基準をどんどん高くしていくべきだと思います。人によってどこに熱量を持って取り組むかはそれぞれですけど、このクラブにはピッチ外にもいろいろな魅力があって、多様な関わり方ができるのは面白いですよね」

――改めてTOKYO CITY F.C.での1年目を振り返って自分に点数をつけるとしたら何点ですか?

「6、70点くらいですかね。自分なりには人前で喋ったり、Twitterだったり、これまでにやってこなかったこともそれなりに頑張ったかなと思います。新しいこと挑戦してみて課題が見つかったり、2020年はこれをやりたいな…みたいな欲もすごく出てきているところです。チームのみんなが関わってくれたり、教えてくれたり、支えてくれたり、楽しく過ごせました」

(取材・文:舩木渉)

阿部翔平(あべ・しょうへい)
1983年12月1日生まれ、神奈川県出身。横浜フリューゲルスジュニアユース、市立船橋高校、筑波大学を経て2006年に名古屋グランパスでJリーグデビュー。高精度の左足キックを武器に主力定着を果たすと、2009年には日本代表にも初招集され、2010年に名古屋の主力としてJ1リーグ優勝にも貢献した。ジェフユナイテッド千葉やヴァンフォーレ甲府でもプレーし、2019年に東京都2部リーグのTOKYO CITY F.C.に加入。Jリーグ通算355試合出場4得点、2019年は東京都2部リーグで13試合出場2得点。

☆インタビュー後編はこちら☆

☆TOKYO CITY F.C.のウェブサイトはこちら☆

【了】

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