柏レイソル・オルンガが得点を取り続ける理由。「ゴールを決めるためには…」、長身FWが併せ持つ知性とは?【英国人の視点】

明治安田生命J1リーグ第1節、柏レイソル対北海道コンサドーレ札幌が22日に行われ、ホームの柏が4-2で快勝した。昨シーズンは27得点を挙げて柏レイソルをJ1昇格へと牽引したオルンガが、今季の開幕戦でも2つのゴールを決めてチームを勝利に導いた。スペインのジローナからやってきたケニア人FWが得点を取り続ける理由を、本人の言葉とともに紐解いていく。(取材・文:ショーン・キャロル)

2020年02月29日(Sat)10時00分配信

シリーズ:英国人の視点
text by ショーン・キャロル photo Shinya Tanaka
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フィジカルの強さだけではない

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【写真:田中伸弥】

 J2優勝のタイトルを勝ち取った2019シーズンの最終節を、13-1という常軌を逸したスコアで京都サンガF.C.を粉砕して締めくくった柏レイソル。ネルシーニョ監督のチームはその勢いでペダルを踏み込んだままJ1の舞台に返り咲き、22日の開幕戦で北海道コンサドーレ札幌に4-2の勝利を収めた。

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 三協フロンテア柏スタジアムで行われた熱戦は、残り25分までにレイソルが4-0の大量リードを奪う展開。だがコンサドーレも終盤に激しい追い上げを繰り出して点差を縮めた。最終的には両チーム合わせて44本のシュートが入り乱れている。

 キム・スンギュが何度か見せた素晴らしいセーブも勝ち点3の確保を助けたが、違いを生んだのはやはりマイケル・オルンガだった。コンサドーレ守備陣にとってほぼ制御不可能だったこのケニア人ストライカーは、2得点に加えて江坂任の先制点へのアシストも供給した。

 オルンガは昨年11月、前述のサンガ戦でJリーグ記録を更新する1試合8得点と2アシストを叩き出したことが世界中でニュースとして報じられた。だがレイソルがJ2優勝を飾る上での彼の貢献は、この圧倒的な個人パフォーマンスのみにとどまるものではなかった。

 193cmの長身ストライカーが前線でチームの攻撃の中心となるのは当然のことだが、現代サッカーにおいてはフィジカルの強さだけで前線を牽引することはできない。威圧的な体格を持ちながらもプレーに絡めず苦戦するFWを数多く見てきたJリーグクラブのファンであれば御存知の通りだ。

「ストライカーとしてゴールを決めるためには」

 オルンガのプレーにおいては集中力と予測力が重要な意味を持っている。相手のディフェンスと中盤の間のスペースを利用する彼の動きと意識は、レイソルが守備から攻撃に転じる上で、そして攻撃をゴールに繋げる上で常に大きな武器となる。

 昨季のレイソルが喫した8つの敗戦のうち5試合で、オルンガが代表チームの試合や出場停止のためプレーできなかったことは偶然ではない。スピードとパワーに優れるクリスティアーノが健在にもかかわらず、今やオルンガが攻撃のキープレーヤーになっているという事実が、プレーの質の高さを非常によく表していると言えるだろう。

「ペナルティーエリア内ではあらゆることを予測しなければならない」。昨年5月の徳島ヴォルティス戦でチームを1-0の辛勝に導く唯一のゴールを決めたあと、オルンガはそう話していた。

「最初にヘディングした時点で入ると思ったけど、GKが弾き返してきたのでDFより素早く反応して押し込むことができた。特にストライカーとしてゴールを決めるためにはエリア内に入っていくことが必要だと思う。監督が僕らに要求しているのもそのことだ」

 レイソルを率いるネルシーニョ監督がFW陣に対し、エリア周辺で何かを起こすようにリスクを冒すプレーを促していることは間違いない。これはどんな相手に対しても、チームの調子がどうであっても変わることはない。

オルンガが持つインテリジェンス

 徳島戦に勝利を収めるまでの時期のレイソルは結果が出ておらず、なかなかゴールを挙げることも試合に勝つこともできずにいた。だが一時的に自信や幸運を失うことがあろうとも戦い方が変化することはなかった。

「むしろメンタル(の問題)だと思う。今日の試合を見ても、たぶん10回か15回はチャンスを作って1点しか決められなかった」。最終的に11試合でわずか7得点と2勝しか挙げられなかったこの時期のレイソルの調子についてオルンガはそう説明していた。

「チームが勝てていない時にはプレッシャーがかかってくる。FWの選手は特にそうだ。エリア内に入るとアドレナリンが湧いてきて、ゴール前で冷静でいられなくなったり、落ち着いてシュートを打てなくなったりしてしまうこともある。そうなるとチャンスを逃してしまう」

 だがオルンガが冷静さを失ってしまうことはそう多くない。トリプルハットトリックに迫った京都戦で大きく底上げされたとはいえ、昨季30試合出場(先発28試合)で27得点という成績は軽視できないものだ。

 2018年のJ1で10試合に出場(先発4試合)して3得点を挙げていたオルンガは、先週末の試合でのゴールと圧倒的なパフォーマンスにより、トップリーグ復帰に全く萎縮していない姿を示した。すでに欧州でのプレーを経験し、ラ・リーガのジローナでハットトリックまで達成した選手であれば当然のことだろう。

 実際のところ、2018年にJ2に降格しながらもレイソルが彼を引き留めることに成功したのはある意味予想外だった。今季の開幕以前にも、オルンガが欧州への復帰に心を動かされているのではないかとの噂もあった。

 だが結局彼は“太陽王”との契約を延長することを選んだ。今後もJリーグのDFやGKたちは、オルンガの脅威に晒される時に怯えて眠れない夜を過ごすことになりそうだ。

 ハランビー・スターズ(ケニア代表)のエースが今後も同じレベルのパフォーマンスを維持していったとすれば、夏には再び移籍の噂が浮上してくることは間違いないだろう。パワーとスピードとインテリジェンス、そしてゴール前での圧倒的な冷静沈着さを併せ持つ彼に惹かれるクラブは多いはずだ。

(取材・文:ショーン・キャロル)

【了】

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