Jリーグ、「降格なし」はアンフェアか? 無観客に日程再編…未曾有の状況で募る不安と懸念【英国人の視点】

ついにJ1が再開を迎える。コロナウイルス問題によって中断を余儀なくされ、無観客試合に日程再編など様々な決断を迫られたJリーグだが、その対応ぶりを英国出身の記者は称えた。その一方で不安が募る面も存在する。それは…。(文:ショーン・キャロル)

2020年07月04日(Sat)10時30分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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評価すべき村井満チェアマンの手腕

村井満
【写真:Getty Images】

 待ち続ける日々は終わった。先週末にはJ2が再開され、J3が開幕。2020シーズンのJリーグが125日ぶりに戻ってきた。

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 きょう再開されるJ1も、J2もJ3も、シーズンのほぼ半分の日程が変更されることになった。FC東京U-23がホームゲームの会場確保を保証できなくなったことで、J3は参加チームのひとつを失うことにもなった。

 だが過去4ヶ月間にわたってピッチ上での動きがない一方で、ピッチ外では様々な活動が展開されてきた。

 この未曾有の状況下でまず言えることは、Jリーグは全体的に非常に良い対応を取ってきたということだ。状況が許す限りで柔軟かつ主体的に動いてきたし、明確なコミュニケーションも取り続けてきた。関係者らは定期的にメディアブリーフィングを行い、新たな情報の提供や詳細説明を行っている。日本語に加えて英語での情報提供も増えており、国内のみならず、関心を高める国外メディアにもプレスリリースで最新の状況推移を説明している。

 特に村井満チェアマンは、リーグの顔として素晴らしい仕事をしてきた。山積みの問題を解決すべく水面下での調整を適切かつ効果的に遂行し続けている。日本プロ野球機構(NPB)との連係によるタスクフォースを実現させたことも前向きな思考に基づいたアプローチの一例だ。公の場でも一貫して落ち着きと冷静さを失わず、前述のメディアブリーフィングにおいても質問に対して適宜対応し、困難な状況下でも決して取り乱す様子を見せることはなかった。

 実際には、Jリーグ首脳陣にとって極めて困難な時期であったことは間違いない。いつ、どのような形で試合を安全に再開することができるかという運営上の問題への対応に加えて、政府による新型コロナウイルスガイドラインや、東京オリンピック延期に関わる対応などの外部要因が大きな頭痛の種となったことは想像に難くない。

 もちろん、全ての対応が完璧だったわけではない。外側から見ている限りでは、本来であれば9ヶ月半に及ぶはずだった2020シーズンのスケジュール全てを25週間で決行するという決断には少なからず不安を覚えざるを得ない。

「リモートマッチ」で考えられる影響とは?

 欧州サッカーの場合と同様に、様々な関係者との間での契約的義務がこの決断を促す決定的要因となったことは確かだろう。リーグと各クラブの長期的な経営安定を図ることはもちろん非常に重要ではあるが、今後6ヶ月間の過密日程が様々な問題を引き起こすことも避けられない。

 選手たちがコンディションを維持し、負傷を回避するためには、メンバーのローテーションや新たに導入される交代5人制のルールも非常に重要となる。だが試合と試合の間でフィジカルとメンタルを回復させ準備を整える時間が十分に取れないことや、移動に関する困難などが、いかに選手層が厚かろうとも全てのクラブを苦しめることになるのは間違いない。

 当面は試合に観客を入れず、リーグが少しばかり無駄に頑張って名付けた「リモートマッチ」を行わなければならないという事実も、当然ながら影響を及ぼす。

 個人的には、世界のどこにでも存在するホームアドバンテージというものをJリーグで本格的に体感できたことはあまりない。試合の流れとほとんど無関係に歌われ続けるチャントはさほど意識されないBGMになりがちであるし、相手チームに恐怖を感じさせるような雰囲気を生み出せる会場も数えるほどしかない。だがそれでもやはり、全くサポーターのいない環境はすぐには慣れないものだろう。

 プレー中の重要な場面に反応し、選手や審判団にプレッシャーをかけるファンがいない状況では、たとえば判定も異なったものとなる可能性がある。無観客のスタジアムで開催される試合では、主審がカードを出す回数が減少し、アディショナルタイムも短くなる傾向があることを示す調査結果もある。不利な判定に対するファンの怒りに乗じて選手が強気になることもなく、状況をそのまま受け入れる傾向が強くなることで、インプレーの時間がより長くなるかもしれない。

 アディショナルタイムが短く、プレーの中断が少なくなることが、ボールを保持して攻撃に時間をかけることを得意とする横浜F・マリノスや川崎フロンターレのようなチームに恩恵をもたらすこともあるだろうか。現時点ではほとんど推測に過ぎないが、シーズンが進行する中で注目に値する部分ではあるだろう。

全チームに残留のフリーパス

 もちろん、マリノスやフロンターレのようにタイトルを目指すチームの目標が変わることはないが、今季のリーグ方式における最大の変更点だと考えられるのは降格が行われないという事実だろう。

 シーズン全体を戦えない可能性がある状況ではある程度理解できる決定ではあった。だが全日程の開催が決まった今となっては、全てのチームに残留のフリーパスが与えられた理由は明確だとは言えなくなった。上位チームがリーグ王者に戴冠したりACL出場権を獲得したりすることがフェアだとされるのであれば、逆に下位でシーズンを終えたチームが降格することはフェアではないのだろうか?

 残留争いが見込まれていたクラブも、リスクの免じられたシーズンを過ごすことができる。さらに、リーグ全体の公平性という面にも波及的な影響が及ぶことになるかもしれない。各クラブや選手たちは、全ての試合に勝ちたいと思っていると言い張るとしても、具体的な目標がない状況でチームのモチベーションが変化することは否めない。

 いずれにしても、シーズンが今後数週間、数ヶ月と進んでいくにつれて明らかになることだろう。いかなる条件の戦いであっても結末が予測できないことこそが、Jリーグの長年の伝統であることも忘れてはならない。少なくとも絶対に断言できるのは、最終的にピッチ上での戦いがどのようなものになろうとも、2020シーズンがピッチ外での激動により長く記憶に残るシーズンになるのは確実だということだ。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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