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Jリーグ 4年前

柏レイソルが誇るホットライン。「先に動くか、蹴るか」、規格外FWと10番の関係とは?【西部謙司のJリーグピンポイントクロス】

柏レイソルのオルンガと江坂任はJリーグ屈指のホットラインを形成している。4ゴールを挙げた北海道コンサドーレ札幌との開幕戦では2得点ずつをマークし、お互いの得点をアシストしている。リーグ戦再開後はまだ勝利のない柏だが、このコンビは他チームの脅威になるだろう。今回はオルンガと江坂の特徴をピンポイントで紐解く。(文:西部謙司)

シリーズ:西部謙司のJリーグピンポイントクロス text by 西部謙司 photo by Getty Images

規格外のオルンガと両利きの江坂

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【写真:Getty Images】

 193センチの長身、ケニア出身。柏レイソルのオルンガは規格外のFWだ。

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 ヌッと突っ立った佇まいから突如走り出すと速い。見た目はよくいるポストプレーヤーで、それも上手いのだが、オルンガの真価はスピードとリーチだと思う。

 ディフェンスラインの背後にポンと蹴り出されたボールに追いつき、GKとの1対1を決めるのが得意のパターンである。草サッカーみたいな点のとり方なのだが、これでとれるのは足が速いのと、ボールに届く範囲が広いからだろう。GKが前進すれば先に触れそうに見えるが、たいていオルンガのほうが速い。リーチがあるのでボールに早く届いてしまうのだ。

 このボールに触れる範囲の広さは空中戦でも発揮される。イーブンの競り合いなら高さで優位、ボールが少しずれたぐらいでも十分届く。DFには届かない場所でもオルンガには届いてしまう。

 10番を背負う江坂任は、このオルンガの特徴を上手く引き出している。

 中盤の左からゴール前にかけて動く江坂は、ボールコントロールに優れ、両足どちらでも同じようにプレーできる。利き足でない左でも柔らかいパスが出せて、きれいなボレーも蹴ることができる。あれほど両足を使える選手も珍しいが、江坂の場合はどちらが利き足かわからないぐらい、どちらにもボールを置いている。普通、右利きなら右足側にボールを置く。左を使えても補助的に使うぐらいでメインはあくまでも利き足だ。ところが、江坂はそうではない。そしてボールの置き直しもしない。だから一瞬を逃さない。

 江坂はワンタッチでオルンガへ浮き球のパスを出すことがある。DFとイーブンならオルンガが有利なのを知っているから、そのタイミングを逃さないようにしているのだろう。江坂の両足利きという特徴がこれを可能にしている。

先に動くか、先に蹴るか

 オルンガと江坂の関係で思い出すのが、釜本邦茂とネルソン吉村のコンビだ。Jリーグができる以前の、日本リーグ時代の話だが、釜本と吉村のコンビはヤンマー(セレッソ大阪の前身)の得点源だった。攻撃のメインが特定のコンビにかかっているというところも、現在の柏との共通点だ。

 釜本の回想によると、「先に動くか、先に蹴るか」という話し合いを吉村とよくしていたそうだ。

 ストライカーの釜本にとっては、吉村のパスに合わせて動きたい。早く動きすぎるとオフサイドになるし、相手DFにも捕まりやすいからだ。一方、吉村は釜本が動くのを見てから蹴ったほうがピンポイントで合わせやすい。吉村の調子がいいときは、釜本が動く前に蹴ってちょうどほしいところにボールが来たという。だから、吉村が「先に動いてくれ」と言うときは、あまり調子がよくないのだと釜本は思っていたそうだ。

 オルンガと江坂については、江坂が先に蹴っている場合が多いようにみえる。ダイレクトのノールックで蹴っているときがそうで、むしろオルンガのほうが気づくのが一瞬遅れている。まだ準備が出来ていないので、ぎりぎりで触れない。

 江坂の感覚にオルンガが合わせられるようになると、さらにチャンスは増えていく気がする。江坂→オルンガのホットラインは対戦相手も十分承知しているから、これから厳しくマークされていくに違いない。ただ、オルンガにはわかっていても防げないものがある。釜本と吉村のコンビも、相手からすれば「これだけだ」とわかっていながら結局止められなかった。もし、柏が2人の関係にもう1人を絡めるようになったら、防ぐのは相当難しくなるはずだ。

(文:西部謙司)

【了】

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