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Jリーグ 4年前

内田篤人が、香川真司が示した“逆ヒント”。渡邉晋がベガルタ仙台のスタイルを作り上げた原点とは?【ポジショナルプレー前夜 後編】

ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開した、渡邉晋氏初の著書『ポジショナルフットボール実践論』から、仙台が「ポジショナルプレー」と評価されるスタイルのベース築く年を振り返った章を、発売に先駆け一部抜粋して前後編で公開する。今回は後編。(文:渡邉晋)

text by 渡邉晋 photo by Atsushi Mihara

香川真司やマリオ・ゲッツェがいても…

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【写真:三原充史】

 シャルケについてはボランチが1枚、つまりアンカーを置いていたのですが、そこに入る選手が本当に守備的な選手でした。ビルドアップに全然関われず、「え? これでいいの?」という話をしたのは覚えています。

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 内田選手が言うには「そもそもそういうタイプの選手じゃないし、特に今日はそういうゲームプランなので」ということでしたが、見る限り、WBも高い位置へ出られないし、インサイドハーフもどんどん下りてしまうし、相手の背後を取るアクションやパスも皆無です。「こうなると3バックは相手の圧に押されてしまう」という現象を、現地で確認することができました。

 それはドルトムントの試合も同じでした。こちらは技術的に優れた選手が数多く揃っていました。それこそ香川真司選手、マリオ・ゲッツェもいたと思います。でも結局、そのあたりの選手もどんどん下りてしまい、背後へのアクションがなくなり、相手のプレッシャーをまともに受ける流れになりました。

「こうなるときついぞ」ということをドイツの2ゲームでは強く感じました。その後、ロンドンへ行ってチェルシーの試合を見ると、前線の3人(ジエゴ・コスタ、エデン・アザール、ペドロ・ロドリゲス)が、前へ走り、ドリブルで前進し、とにかく相手の背後を強く意識したプレーを繰り返していました。

 そうすると、相手最終ラインが下がり必然的に両ワイドも高い位置を取れるし、全体的な矢印が前を向く。やはり、1トップ・2シャドー、特に2シャドーが前へのランニングで背後を取る動きをしないと、逆に圧力を受ける試合になってしまうなと、最後のゲームでポイントを整理できたのをよく覚えています。

明確となった「何より重要なもの」とは?

 そのような試合に出会ったのはまったくの偶然でしたが、様々なチームの特徴、良し悪しを間近で見たことで、自分の中で3バックの特徴を整理しながら2017年に入ることができました。まずは前の3枚、特に2シャドーの背後へのアクションが何より重要だと。これをオフシーズン中に明確にできたのはかなり大きかったと思っています。

 そして、その背後の取り方を習得させるために、その後のキャンプから様々な試行錯誤をすることになります。そこから我々は、《レーン》と呼ばれるものを発見し、立ち位置を導き出し、戦術の浸透を一歩一歩進めていくことになりますが、それは次の章で。

 布石──。今から振り返ると、2016年は攻撃マインドへの転換、グループ単位のベースの植え付け、高い位置の幅取り、システムの帰結など、後に『ポジショナルプレー』とみなさんに評価していただくスタイルのベースを築く年になったのだと思っています。

(文:渡邉晋)

ベガルタ仙台でポジショナルフットボールを確立した渡邉晋監督の著書が刊行。いまも仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウが…! 詳細は↓をクリック。

9784862555724

『ポジショナルフットボール実践論 すべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる』


定価:本体1700円+税

≪書籍概要≫
渡邉晋は《切る》《留める》《解放》など独自の言語を用い、ベガルタ仙台に「クレバーフットボール」を落とし込んだ。実は選手を指導する際、いわゆる『ポジショナルプレー』というカタカナ言葉は一切使っていない。
にもかかわらず、結果的にあのペップ・グアルディオラの志向と同じような「スペースの支配」という攻撃的なマインドを杜の都に浸透させた。フットボールのすべては「相手を困らせる立ち位置」を取ることから始まる――。
ゴールからの逆算、すなわち「良い立ち位置」を追い求め続けた監督時代の6年間を時系列で振り返りながら、いまだ仙台サポーターから絶大な支持を得る「知将」の戦術指導ノウハウをあますところなく公開する。

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【了】

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