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Jリーグ 3年前

崖っぷちJリーグで、明るい未来がある3クラブは? 外国籍選手は入国できず、クラブ経営もひっ迫だが…【英国人の視点】

明治安田生命Jリーグの開幕が2週間後に迫っている。新規の外国籍選手・スタッフの入国が遅れ、試合観戦のルールについても流動的。新型コロナウイルスによる影響は、昨シーズンと同様、Jリーグ全体の頭を悩ませるだろう。(文:ショーン・キャロル)

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

今季も波乱のJリーグ

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【写真:加藤健一】

 Jリーグの2020シーズンはピッチ内外で大きなストレスが引き起こされ、過去最もカオスに満ちたシーズンのひとつとなった。2021シーズンのリーグ日程は昨季ほどには混乱したものにはならないことが望まれるとしても、各クラブや選手たち、そしてファンにとって再び困難に満ちたシーズンとなりそうな兆候は早くも感じられる。

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 例えばAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場クラブはグループステージの試合をどこで戦うことになるのかまだ分かっていないし、試合のチケット販売に関してもゼロックススーパーカップのみが開催2週間を切ってようやく告知された。今後数日で新型コロナウイルスの感染拡大が起きた場合には、川崎フロンターレとガンバ大阪のどちらか、あるいは両方が他クラブと入れ替えられる可能性さえ残されている。

 こういった試合開催に関する不可避の障害に加えて、外国人選手やスタッフがプレシーズントレーニング合流に遅れたというクラブもある。あるいは、新加入選手の場合であれば今でもチームに合流できていない選手が数多くいる。理想とは程遠い現実だ。

 日本における外国人選手の成功率には、当然ながら当たり外れもある。ジェジエウ(川崎フロンターレ)やエヴェラウド(鹿島アントラーズ)、マテウス(名古屋グランパス)らの活躍の影には、失敗に終わったブラジル人選手もその2倍はいただろう。

 補強されたビッグネームの全てが巨額の報酬に見合うパフォーマンスを見せられるわけでもない。新加入選手の定着を助けるためには最初の適応過程が重要となるため、リーグ開幕が迫りくる中で少なくとも2ヶ月の待機を強いられることは多くの関係者にとって頭の痛い問題だろう。

崖っぷちに立たされるクラブ経営

レオナルド
【写真:Getty Images】

 ファンが試合観戦に訪れることができるのか、できるとすればどの程度の人数なのか、また試合会場で何をしていいのかについても依然として流動的。この状況はクラブ財政に対しても影響を強めており、長引くパンデミックはJリーグの大半のクラブの運営と未来に不安な影を落とし続けている。

 浦和レッズはレオナルドを山東魯能へ売却しようとしていたようだが、その背景にも経営の厳しさがあるのではないかと考えられる。埼玉のビッグクラブは間違いなく、観客入場制限によって特に危機感を強めているクラブのひとつだ。

 実際のところ、こういった不安は世界中に広がっている。2月初めにイングランド・リーグ1のスウィンドン・タウンがスター選手のFWディアラング・ジャイエシミの売却を余儀なくされた際にも、リー・パワー会長はこのクラブが“ギリギリ”の状況にあると表現していた。

「率直に言って、ここまでのことになるとは驚いている。3月以来サポーターがいなくなり、収入もなくなってしまった。厳しくなる一方だというのが我々の現状だ」と会長は『BBCラジオ・ウィルトシャー』に語った。

「1週間ごと、1ヶ月ごとに崖っぷちで岩肌にしがみついている。チームの最高の選手たちを売却するというのは、本音としては最もやりたくないことだ。だが昨年3月から言い続けているように今はパンデミックの真っ只中であり、スタジアムにサポーターが入れない状況で、クラブの生き残りのために朝も昼も夜も戦い続けてきた」

監督不在の徳島と主力の抜けた福岡

ブルーノ・メンデス
【写真:Getty Images】

 だが巨視的な問題は一旦脇に置いて、目前に迫った国内のサッカーシーズンに話を戻そう。今季はJ1に残留することがこれまで以上に重要になりそうだが、昇格組の2チームはどちらもあまり幸先の良いスタートを切ることができなかった。

 昨季のJ2王者である徳島ヴォルティスはリカルド・ロドリゲス監督が浦和へと去っただけでなく、その後任のダニエル・ポヤトスは依然として日本に入国することができていない。遅ければ3月末まで新たなチームの選手たちを直接指導することはできなさそうであり、その頃にはすでにチームは6試合ほどを戦い終えていることになる。

 アビスパ福岡は長谷部茂利監督が続投しているとはいえ、こちらも状況は安定していないように見える。昨季のキープレーヤーの何人かがベスト電器スタジアムを去っていった。

 チームにとって4度目となる昇格に重要な役割を果たした上島拓巳、増山朝陽、遠野大弥はそれぞれレンタル元クラブへ復帰。代役となる奈良竜樹、杉本太郎、ブルーノ・メンデスはいずれも確かな補強ではあるが、長谷部監督の特徴的で組織的なプレースタイルに適応するためには時間が必要となるだろう。

 今季はトップリーグから4チームが自動降格となる。それほど時間をかけている余裕はないし、アビスパにとっては開幕から6試合の日程も非常に厳しく感じられる。名古屋グランパス、横浜F・マリノス、鹿島アントラーズを迎えてのホームゲームに加えて、残留争いのライバルになると見込まれる清水エスパルス、徳島、そしてお隣のサガン鳥栖という3チームとのアウェイゲームを戦う。

明るい展望のトップ3

ジョアン・シミッチ
【写真:Getty Images】

 残留争いとは対照的に、昨季のトップ3の状況は非常に明るいようだ。川崎、ガンバ、名古屋はいずれも主力選手をチームに残した上で、国内とアジアで戦い抜くため選手層を厚くすることに成功している。

 鬼木達監督にとってはジョアン・シミッチが中盤で優れたオプションとなるだろうし、昨季リーグ2位&天皇杯準優勝のガンバはレアンドロ・ペレイラと一美和成の加入で間違いなく前線の破壊力を高められる。マッシモ・フィッカデンティ監督も、昨季リーグ最少失点の守備力に加えて攻撃の脅威を高めることを画策し、柿谷曜一朗や齋藤学をチームに迎えている。

 だが何事もそうだが、今はあまり先のことに目を向けても明確な見通しは得られない。今後の数週間、数ヶ月間も十分な柔軟性を持ち続けることが重要になってくるだろう。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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