【英国人の視点】川崎フロンターレはどうすれば止められるのか? 反撃したガンバ大阪と番狂わせを演じた2チームに共通するのは…

明治安田生命Jリーグのオープニングゲームとなる川崎フロンターレ対横浜F・マリノスが26日に行われる。2020シーズンのJ1と天皇杯の2冠に輝いた川崎Fは20日のFUJI XEROX SUPER CUPでガンバ大阪を撃破。今季も優勝候補の一角と目されている川崎Fにつけ入る隙はあるのだろうか。(文:ショーン・キャロル)

2021年02月25日(Thu)11時55分配信

text by ショーン・キャロル photo Getty Images
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見応えある一戦となったゼロックス

三笘薫
【写真:Getty Images】

 FUJI XEROX SUPER CUPという大会は、例年であればほぼ象徴的な存在に過ぎなかった。長く待ちわびた新シーズンがついに始まったことを意味するだけだ。

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 だが今回は少しばかり状況が異なっていた。2020シーズンは大きく引き伸ばされ、FC東京が優勝を飾った1月4日のYBCルヴァンカップ決勝でようやく終了したばかりだった。さらに、川崎フロンターレとガンバ大阪という2チームもつい6週間前の天皇杯決勝で激突したばかり。シーズンが「戻ってきた」というよりは、既視感が強かった。

 それだけではない。普段であればスーパーカップはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)序盤の激戦の合間に組み込まれる。両チームの監督はキープレーヤーを温存し、100%には届かないモチベーションで試合に臨む。結果としてやや豪華なトレーニングマッチのようなものになってしまう場合も多い。

 しかし、コロナウイルスによる現在進行中のパンデミックが影響し、今年はアジアでの戦いは4月にならなければスタートしない。つまり、フロンターレもガンバも例年よりはこの一戦に本腰を入れることができた。その結果として、埼玉スタジアムでは非常に見応えある一戦が繰り広げられた。

川崎フロンターレの強さは決定力だけではない

 昨季のリーグ戦や天皇杯と同じく、3-2で最終的に勝者となったのはフロンターレの方であり、ガンバはまたも準優勝に終わった。鬼木達監督のチームは今年も再び、タイトルを目指すすべてのチームにとって倒すべき目標となりそうな兆候が早くも感じ取れる。

 同じ目標に向けて戦う団結力は並外れており、試合を決めることができる力を持ったトップレベルの選手たちを豊富に抱える選手層も昨年に引き続き圧倒的。三笘薫は前半に立て続けに2本の冷静なフィニッシュを決めてチームを勝利に向けて勢いづけ、当然ながら脚光を浴びた。そして、残り18分から登場した小林悠が試合のラストキックで決勝点を生み出したことも、選びきれないほどの控え戦力の豊富さをよく表していた。

 もちろん、決定力のあるフィニッシャーたちを擁していることだけが、フロンターレが成功した理由ではない。相手ボールを奪い返すプレーにも驚異的なまでに力を入れている。

 後半開始直後に相手のクリアをブロックしたレアンドロ・ダミアンがゴールを決めたかのように喜んでいたのが、おそらくその最大の好例だろう。同胞のジョアン・シミッチもピッチ中央でチーム一番の武闘派となり、守田英正の穴を十二分に埋められる力があることをデビュー戦で早速示していた。

 名古屋グランパスから加わったシミッチは、チームがボールを持っている際のプレーも効果的であり効率的だった。それもチーム全体に共通するテーマのひとつ。まるで“ティキタカ”全盛期のバルセロナのように、リズムが良い時のフロンターレからボールを奪うのはほぼ不可能である。DFであれFWであれ同じようにスムーズにボールを扱い、楽々と窮地を脱したりスペースにボールを送り込んだりしてみせる。

ガンバ大阪が見せた希望

 だがJ1の他チームがまったく希望を持てないというわけでもない。この試合ではフロンターレがその力を再確認させる一方で、ガンバは後半に反撃を繰り出した。ガンバの戦いぶりも、昨季王者をどのように食い止めるべきかについてある種の指針を示したかのようだった。

 決勝点を狙って押し込んだガンバは、96分の失点で最終的には苦杯をなめた。ただ、リスキーなアプローチであることは確かだとしても、フロンターレに対して仕掛けていくことの重要性は示している。

 ボールを持たせて時間を与えてしまうと、試合を支配することにかけては超一流である彼らに、プレーのペースダウンも急加速も好き放題にやられてしまう。昨年の成功のベースとなっていたのはポゼッションを支配し、特に攻撃意識の強い両サイドバックらのサポートを得て、選手たちを前方へ押し上げられる力にあった。

 だがそれをさせず、相手選手の間に入り込んでいくようにすれば、ミスが引き起こされる傾向はある。ガンバがより思い切ったプレーをするようになったことで2点ビハインドから追いつき、スコアを2-2の同点に持ち込むことができたのも、フロンターレがクロスをクリアしそこねたプレーとPKを与えてしまったプレーによるものだった。

 引いて守備を固め、カウンターのチャンスを窺っているようでは、みすみす勝ち点3を差し出してしまう結果にしかならないだろう。ラインを下げて主導権を放棄するよりも、相手と同等のインテンシティと積極性を発揮して対応を強いる方が、フロンターレとの試合から何かを手に入れられるチャンスははるかに大きくなる。

試金石となる横浜F・マリノスとの開幕戦

 昨季の終盤戦にかけて彼らが喫した2つの黒星が、ボール扱いを重視することで知られる2チームによるものだったことも驚くには値しない。北海道コンサドーレ札幌と大分トリニータは、王者戴冠を目前にしていたチームを相手に番狂わせを演じた。ほぼ互角のポゼッション率(それぞれ47.2%と50.7%)を握るとともに、シュート数でもフロンターレを上回っていた(12対11と12対10)。

 もちろん、過酷なシーズンの終盤を迎えたその頃にはもう燃料切れが近づいていたと考えることもできるかもしれない(さらに言えば大分戦でフロンターレは56分間を10人で戦っていた)。だが、元日の天皇杯を戦ったあと短いオフを挟んでリーグタイトル防衛とACLでの挑戦をスタートさせる今季も疲労が影響してくることは間違いないだろう。

 夏には三笘が欧州へ旅立つ可能性も盛んに噂されている。ワンマンチームではまったくないとしても、最も試合を決められる力を持った選手の一人を失えばある程度の戦力ダウンには繋がるだろう。

 積極的なアプローチを採用すれば当然ながら隙も大きくなるが、フロンターレも毎週のように激しい戦いを仕掛けられれば確実に消耗し始めるはずだ。最終的に敗れるチームもたくさん出てくるとしても、おとなしく引いて奇跡を待つよりはいいかもしれない。

 攻撃こそ最大の防御という常套句もある。金曜日の開幕戦の相手はアンジェ・ポステコグルー監督の横浜F・マリノスである。連覇に向けた戦いをスタートさせるにあたり、フロンターレは早速攻撃的な相手に試されることになりそうだ。

(文:ショーン・キャロル)

【了】

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