浦和レッズで新加入の背番号15が輝く。リカルド・ロドリゲス監督の要求に応える男、明本考浩とは何者か?【コラム】

明治安田生命J1リーグ第7節、浦和レッズ対鹿島アントラーズが3日に行われ、浦和が2-1で勝利を収めた。公式戦4試合連続でゴールがなかった浦和は前節から先発5人を変更。2試合ぶりに先発した明本考浩は、2得点に絡む活躍でリカルド・ロドリゲス監督の起用に応えている。(取材・文:元川悦子)

2021年04月04日(Sun)11時22分配信

シリーズ:コラム
text by 元川悦子 photo Getty Images
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浦和レッズが味わう「生みの苦しみ」

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【写真:Getty Images】

「正直、もう少し勝ち点を取れる算段をしていました。ただ、大事なのは今、積み上げをすること。展開するサッカーをしっかり選手に埋め込んでいき、表現すること。チームコンセプトの浸透は進んでいるので、そんなに心配していません」

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 西野努テクニカルダイレクター(TD)がこう語ったように、リカルド・ロドリゲス監督率いる新体制の浦和レッズは今季序盤、生みの苦しみを味わっている。3月の国際Aマッチウイーク(IMD)までのJ1・6試合は1勝2分3敗の勝ち点5。3年計画の2年目で、タイトルを取りに行くのは来季だとしても、このまま停滞が続けば、下位4チームのJ2降格という危険に直面しかねない。IMD明けの4月は浮上しなければならなかった。

 その初戦は3日の鹿島アントラーズ戦。今季は彼らも開幕ダッシュに失敗し、リーグ戦連敗中だった。しかし、かつては「ナショナルダービー」を繰り広げた宿敵。入場制限が1万人に緩和された埼玉スタジアムには「URAWA」の文字をあしらったコレオグラフィーが披露された。今季加入した明本考浩は「こういう雰囲気の中で自分の背番号15が掲げられているのは本当に嬉しい」と喜びを噛み締めながら、ピッチに立った。

 この日の浦和は立ち上がりから素晴らしいサッカーを見せた。柴戸海をアンカーに配する4-3-3がうまく機能し、小気味いいパスワークで相手を揺さぶりながら敵陣に迫っていく。

 左WGに配置された明本は、山中亮輔とのタテ関係を有効活用しながら深い位置まで侵入し、時にはゴール前に入り込んで得点を伺う。「上下の運動量や間でボールを受けて散らすプレー、戦う部分もリカルド監督からは言われています」と開幕直後に話していた通り、指揮官の要求以上のダイナミックさを見せつけた。

指揮官に誕生日プレゼントを贈った浦和レッズ

 神出鬼没なアタッカーにとって、最大の見せ場となったのが、前半37分の先制の場面だ。小泉佳穂の大きな展開を受けた西大伍が右サイドで前を見た瞬間、鹿島守備陣の背後が空いていることを察知。明本は迷わず飛び込んだ。そこに西からイメージ通りのボールが来ると、U-24日本代表GK沖悠哉をあざ笑うかのように左足を一閃。待望の今季初得点を挙げたのだ。

「ホントにいいボールだったし、流し込むだけでした。監督から『背後背後』と言われていたので、つねに意識していました」と本人も満面の笑みを浮かべた。

 だが、前半終了間際に関川郁万の同点弾で1-1に。振り出しに戻った状態で後半を迎えたが、浦和の士気は落ちなかった。明本の推進力あるダイナミックな崩しは対面の大卒新人・常本佳吾に確実に脅威を与えていた。それを明本自身も分かったうえで、自信を持って駆け引きしていたはずだ。

 その揺さぶりが後半18分のPK奪取につながる。武藤のスルーパスに反応した背番号15が常本の内側を抜けようとすると、常本はたまらずファウルを犯した。荒木友輔主審がVARチェックを経て、ペナルティスポットを指す。これをキッカー・槙野智章が決め切り、浦和は勝ち越し点をゲットした。

 その後にも関根貴大の3点目がVAR判定で取り消される不運もあったが、チーム全体が崩れることなく1点のリードを守り切る。そしてタイムアップの笛。90分フル出場した明本はリカルド監督の47歳のバースデーに勝利をプレゼント。埼スタのピッチで歓喜の瞬間を味わうことができた。

雑草魂で成り上がる明本考浩のプレー

 ここまでの道のりは簡単ではなかった。小学校から栃木SCのアカデミーに所属していた明本は国士舘大学を経て、2020年にJ2・栃木でプロキャリアをスタートさせた。

 大学時代の2019年には、ユニバーシアードに参加した経験がある。しかし、そこでチームメイトだった上田綺世や田中駿汰、Jリーグベストイレブンに選ばれた三笘薫らに比べると地味な印象は否めない。それでも、栃木では田坂和明監督に鍛えられ、矢野貴章やエスクデロ競飛王ら経験豊富なFW陣と戦ったことで、武器であるアグレッシブさに磨きがかかったのは間違いない。

「去年はJ2だったんで、ユニバの仲間が活躍してる姿を見てましたし、負けたくないと思った。リカルド監督が自分に期待しているのは推進力とゴール。もっと貪欲にチャレンジしていかないといけない。移籍直後は消極的な部分が多々あったんで、どんどん仕掛けて突っ込んでいきたいです」

 栃木時代に2トップの一角に入ることが多かった。彼自身は野心をみなぎらせていたが、浦和でさまざまな役割を託される戸惑いもあったのだろう。

 しかしながら、今回の鹿島戦では左サイドアタッカーとして迷うことなくゴールに突き進み、2得点を叩き出す目覚ましい働きを見せつけた。ここまで汰木康也がファーストチョイスと見られていた同ポジションの競争でも一歩リードした格好だ。

「レギュラーに定着したとは全然思っていません。結果を残さなければ試合には出られないし、つねに競争。周りの目がなんだってのは関係なく、自分自身のプレーをすることに集中してます」と話すように、彼はつねに自分に矢印を向けて努力できる男だ。だからこそ、J2から個人昇格し、表舞台に駆け上がってきたのだろう。

 このパフォーマンスがスタンダードになればリカルド監督も放ってはおかないはず。背番号15が今後の快進撃のキーマンになってくれれば、チームにとっても理想的だ。

 持ち前の雑草魂で成り上がった男は浦和の救世主になれるのか。ここからの一挙手一投足が楽しみで仕方がない。

(取材・文:元川悦子)


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【了】

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