サガン鳥栖の勢いが止まらない。背番号10が躍進の原動力。1ゴール1アシストの樋口雄太が意識していたのは…【コラム】

2021年04月25日(Sun)11時26分配信

シリーズ:コラム
text by 元川悦子 photo Getty Images
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明治安田生命J1リーグ第11節、FC東京対サガン鳥栖が24日に行われ、1-2でサガン鳥栖が勝利した。今季から背番号10を背負う樋口雄太は、先制点をアシストすると、鮮やかなミドルシュートで追加点を奪った。躍進著しいサガン鳥栖で、アカデミー出身の樋口は重要な役割を果たしている。(取材・文:元川悦子)

名古屋に続き、FC東京も撃破

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【写真:Getty Images】

 今季J1開幕から6戦無敗の好スタートを切り、4月18日にはリーグ無敗だった名古屋グランパスを2-1で下したサガン鳥栖。彼らの勢いが止まらない。

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 24日のFC東京戦も前半から酒井宣福、樋口雄太が立て続けに2点をゲット。後半、森重真人に1点を返されたものの、武器である攻守両面の連動性とハードワークを最後まで維持した。2-1で連勝し、3位の座をしっかりとキープした。

「前節(名古屋グランパス戦)同様、相手には強烈な個がいるので、ハイプレッシャーをかけて後ろを空けないことを意識しました。前半はしっかりとゲームプランを遂行してくれた。後半は相手がシステムを変えてきて押し込まれたが、選手たちがよく戦ってくれた」と金明輝監督も前向きに評価している。チーム全体の守備意識と一体感には目を見張るものがあった。

 昨季限りで日本代表経験のある高橋秀人、2016年リオデジャネイロ五輪代表の原川力、東京五輪世代の原輝綺や森下龍矢など、知名度の高い選手が次々と流出している。そのため、今季の鳥栖は「J2降格候補」と目されることも多かった。実際、酒井や山下敬大、飯野七聖ら個人昇格組の新戦力もJ1でどこまでやれるか未知数で、ネガティブな予想をされるのもやむを得ない部分があった。

 ところが、ふたを開けてみると山下がここまで5ゴールを叩き出し、酒井も名古屋、FC東京相手に2戦連発。東京五輪代表候補の林大地も4ゴールで一気に頭角を現すなど、選手たちがハイレベルな競争を繰り広げている。朴一圭、エドゥアルド、ファン・ソッコら実績ある守備陣の統率力も高く、ここまで11試合で複数失点ゼロという安定感を見せている。

サガン鳥栖で躍動するアカデミー出身者たち

 そんなチームを力強く支えるのが、アカデミー出身者たちだ。凄まじい運動量で中盤を支える19歳・松岡大起を筆頭に、17歳ながら主力に定着した中野伸哉、今季10試合出場1ゴールの本田風智、昨季18試合出場3ゴールの石井快征らが活躍している。アカデミー指導歴の長い金監督から直々に薫陶を受けた面々が、ハードワークと素早い攻守の切り替えをピッチ上で確実に実践しているのだ。

 今季からエースナンバー10を背負う樋口もその重要な1人と言っていい。彼は小学生の頃から鳥栖のアカデミーに所属し、U-12、U-15、U-18で過ごしたが、トップ昇格が叶わず鹿屋体育大学へ進学。そこで実績を積み上げ、2019年に古巣に戻ってきた選手である。168㎝・66㎏と体格的には小柄だが、両足で高精度のキックを蹴れるボランチとして注目されていた。

 プロ1年目はリーグ戦1試合出場にとどまったものの、2年目の2020年は28試合出場1ゴールをマーク。金監督体制のチームでは松岡と並ぶ中盤のキーマンとして重要視されるようになった。

 キム・ミヌが2016年に退団して以来欠番だった背番号10を背負った今季、樋口は開幕からフル稼働。本職のボランチのみならず、4月7日の川崎フロンターレ戦では右サイドに入って積極果敢に攻撃を仕掛けた。幅広いプレーを披露し、得意のプレースキックで得点機も演出していた。

「ボールを受けた瞬間に前を見て蹴る」

 こうして実績を積み上げることで、本人も大きな自信をつかんだのだろう。それが1ゴール1アシストという結果を残したFC東京戦にも色濃く出ていた。

 最初の見せ場は前半18分の先制弾のシーン。松岡がボールをカットし、樋口、松岡、仙頭啓矢と細かいパスをつないだ後、右サイドでボールを受けた樋口は前線に飛び出した酒井の動きを見逃さなかった。左足でクロスをピンポイントで蹴り込んだ次の瞬間、背番号15は打点の高いヘッドでゴール。樋口の高度なキックには誰もが驚かされたに違いない。

「いつもそうですが、ボールを受けた瞬間に前を見て蹴ることを意識しています。チーム全体でボールを回すだけじゃなくて、タテにボールを送ることでゴールに早く迫れる。それを出せたかなと思います」と背番号10は嬉しそうに言う。速攻とポゼッションを巧みに使い分けているからこそ、今の鳥栖は確実に勝ち点を積み上げられる。その原動力となっている彼の存在はやはり特筆すべきだ。

勇気と希望を与える背番号10

 前半34分に自身が挙げた2点目も賞賛に値する。ボールを受けてからドリブルで前へ運び、迷うことなく右足で振り抜いたミドルシュートは非常に質が高かった。加えて言うと、その前に酒井と林が森重を囲んでボールを奪い、仙頭、松岡とつないで樋口にパスが供給されているのも見逃せない点だ。前線から組織的かつ献身的な守備をして、そこから攻撃を仕掛けるという「鳥栖スタイル」を全員が貫いているから、樋口のスーパーミドルにつながったと言って過言ではない。

「やっぱり攻撃もそうですけど、守備でいい一体感が出てきていますし、1人1人がサボらずに役割を遂行している。チームのために走って戦っているのが、今季の好調につながっていると思います」と樋口も神妙な面持ちでコメントしていたが、まさにその通りだった。

 コロナ禍の2020年度、約10億円の赤字を計上する見通しの今の鳥栖には、大がかりな戦力補強をする資金がない。だからこそ、アカデミー出身者を中心にポテンシャルのある若手を鍛え上げ、持てる力を最大限発揮して戦うしかない。樋口のような選手の活躍が、クラブを支える人々にとって大きな勇気と希望につながるのは間違いない。

 4月25日から東京・大阪など4都府県で3度目の緊急事態宣言が発令され、昨夏以来のリモートマッチ開催を余儀なくされるなど、Jリーグは逆風に直面している。そんな時だからこそ、鳥栖のようなビッグネームに頼らない全員サッカーは好感が持てる。彼らの戦い方を今一度、多くの人々に認識してもらうことは重要だ。その主軸を担う樋口雄太という10番の存在も大いに注目してほしい。

(取材・文:元川悦子)


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【了】

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