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浦和レッズ、GK鈴木彩艶の“無資格出場”で処分決定。試合結果や個人記録への影響、処分の基準とは?

text by 編集部 photo by Getty Images

鈴木彩艶
【写真:Getty Images】


 Jリーグは1日、6月20日に開催された明治安田生命J1リーグ第18節の浦和レッズ対湘南ベルマーレ戦における処分を発表した。

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 この試合では、浦和が出場資格のなかったGK鈴木彩艶をプレーさせていたことが終了後に判明。Jリーグの規律委員会は浦和に対し、2-3だった試合結果を0-3の負け扱いにすることと、けん責の処分を通達した。

 なお、公式記録が訂正されるのは試合結果の「2-3」→「0-3」のみで、選手個人の得点やプレー時間などの記録は維持される。湘南戦で浦和のFWキャスパー・ユンカーが挙げた2得点も取り消されることはない。

 今回の懲戒処分には3つのポイントがある。

 それは「資格なしで試合に出場した選手個人に対して」「資格のない選手を出場させた浦和に対して」「試合の取り扱い」の3点だ。

 現在、Jリーグではリーグが指定する公式検査で新型コロナウイルスの陰性判定を受けていなければ試合へのエントリー資格が得られない。しかし、鈴木はU-24日本代表の活動に参加していたため、先月20日の湘南戦への出場に必要な公式検査を受けられていなかった。

 ただ、代表活動などの特別な事情でJリーグの公式検査を受けられなかった選手に対する救済措置も用意されている。鈴木の場合は日本サッカー協会(JFA)が代表活動期間中に実施したPCR検査の結果をもとに、Jリーグエントリー資格認定委員会に申請し、エントリー資格の認定を受ければ湘南戦の出場が可能だった。

 ところが浦和は6月17日の18時までに鈴木のエントリー資格の申請をしなければならなかったにもかかわらず、「クラブの認識不足が原因」でJリーグへの申請を怠っていたことが判明。鈴木がエントリー資格のないまま湘南戦に出場していたこともわかり、6月23日に行われたJ1第19節の柏レイソル戦には出場できなかった。

 Jリーグの規約に照らせば、鈴木は最大で1ヶ月の出場停止処分となる可能性もあったが、今回のケースでJFAが実施するPCR検査を全うして陰性判定を受けていた選手側には情状酌量の余地があり、「資格なしで試合に出場した選手個人」への出場停止処分はなし。

 一方で資格のある選手を正しくエントリーする義務を負う浦和レッズも、特殊な状況でのケアレスミスが故に情状酌量の余地があると判断され「けん責」という軽い処分となった。ただ、試合結果に関しては「エントリー資格のない選手を出場させた」という事実があるため、2-3から0-3の敗戦扱いになる。

 また、Jリーグは再発防止に向けて検討の余地があることも認めている。

 現在、試合当日のメンバー表提出とエントリー資格の確認は、紙での照合作業になっている。試合開始150分前までにクラブがメンバー提出用紙に記載された選手と、Jリーグから提供されたエントリー可能者リストとの照合を行う。

 そしてマッチコミッショナーがクラブから提出されたメンバー用紙とエントリー可能者リストを確認・照合し、試合開始120分前に対戦する両クラブのメンバーが発表される流れになっている。

 浦和対湘南では、このプロセスの中で複数の確認ミスが起きた。Jリーグはすべてのマッチコミッショナーに対し、今後は「エントリー可能者リストが有効期限内のものか」「メンバー提出用紙に記載されている選手の名前と背番号が正しくエントリー可能者リストに載っているか」を重ねて確認するよう周知したという。

 さらに紙によるメンバー表の照合ではヒューマンエラーが起きやすいため、将来的な電子化や、エントリー不可能な選手が最初からシステム上に表示されないような仕組みづくりの必要性も認識している。

 マッチコミッショナーの確認が終わったメンバー提出用紙とエントリー可能者リストの保存義務はなく、現状は返却されたものをすぐ処分しても構わない。浦和も湘南戦のメンバー提出用紙とエントリー可能者リストをすでに廃棄しており、当該試合で有効期間内のリストが使用されていたかなどの確認ができない状況だということもわかった。

 Jリーグは今後、メンバー提出用紙とエントリー可能者リストに関して保存義務を設けるか、マッチコミッショナーが保管するかなどの改善策を検討していく。今後は同じような事態が再発しないことを願いたい。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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