重責を果たした「中堅世代」
【写真:田中伸弥】
両サイドアタッカーが意思疎通した修正点が直後からハッキリとピッチで表れた。前半は大迫が相手CB2枚を1人で追っていたため、なかなか高い位置でボールを奪えなかったが、後半から両翼の2人が思い切りプレスに行ったことで、チーム全体の守備がより前へ前へと変化した。
相手に引っかかっても田中と守田が2度追いして奪い返したり、デュエル王・遠藤も確実にカバーに回り、厚みのある守りがリズムをもたらした。
開始5分の2点目はまさにその流れから生まれた。一度は失ったボールを中央右寄りの位置で守田、伊東、遠藤が3人がかりで寄せて奪いきり、遠藤が中央左にいた南野を経由して外を上がってきた長友に渡った。中国戦で激しい批判にさらされた35歳の大ベテランは躍動感ある走りで中にラストパスを出す。
そこに反応したのがエース・伊東。右足でシュートをゴール左隅に豪快に突き刺し、前回予選の原口元気に並ぶ最終予選4戦連続得点の離れ業をやってのけたのだ。
「あのシュートは半分ラッキーって言うか、ファーに思い切り打って(ボールが)行ったところがラッキーだったと思います」と自然体の男はいつも通りの口ぶりだったが、この日も1得点1アシストという目に見える結果を残し、大一番の勝利を引き寄せた。
2018年9月に森保ジャパンが発足した頃はジョーカー的な位置づけで、攻撃陣の中核から遠い存在だった。そんな伊東が最終予選で日本代表をけん引し、重要な局面で南野としっかり話し合って改善へのアクションを起こすというのは、紛れもない大きな成長だった。
負傷離脱中のキャプテン・吉田麻也の代役としてマークを巻き、アンカーポジションで攻守両面に安定感を与えた遠藤、攻撃のスイッチ役となった守田、先制弾を奪った南野、そしてエース級の輝きを見せた伊東。20代後半の「中堅世代」がそれぞれに重責を果たしたからこそ、サウジという強敵から2-0という勝利をもぎ取ることができた。
もちろん長友や大迫らベテラン勢の復調、田中碧や板倉滉ら東京五輪世代の奮闘も見逃せないが、今回に関しては中堅世代の存在感がチームにとって非常に大きかったと言っていい。