サガン鳥栖では「走れ」とは言わない。頻繁な移籍を逆手に取ったプレーコンセプトとは?【若き知将・川井健太の頭の中/後編】

2022年09月06日(火)8時05分配信

text by 清水英斗 photo Getty Images
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限られた環境の中で、J1上位をキープするサガン鳥栖は、ある種「Jの異端」と評することができる。今季から指揮を執る川井健太監督は、どのようにチームを作っていったのか。[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する『フットボール批評issue37』(9月6日発売)に掲載されている川井健太監督のインタビューを一部抜粋し、前後編に分けて公開する。(取材・文:清水英斗)


「毎年多くの選手が入れ替わる」を逆手に取る


【写真:Getty Images】

―地域性のほかで言えば、クラブの予算規模や選手の入れ替わり、現状の順位。そのあたりも出発点として、プレーコンセプトを考えるポイントになると思いますが、いかがでしょうか。


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「間違いなく考えました。予算規模や選手をまず見て、その中でコンセプトのところは何が良いのか。その大前提には変えられない部分、たとえば予算は僕の力では変えられません。その変えられない部分を認識しながらも、変える部分を見つけていく。コンセプトは少し変えられるんですよね。一般的に予算が少ない、選手の入れ替えが多いことはデメリットですが、それをメリット化することを含め、『ボールを前に運ぶこと』『ボールとともに前に行くこと』というコンセプトに集約していきました」

―「前へ」という言葉は、九州男児的な地域性、鳥栖のクラブカラーとのつながりは感じます。一方で、予算や選手の入れ替わりとはどうつながるのですか?

「一発でゴールを決められる選手がいれば、とりあえずボールを渡しておけばいいですが、そういう選手は一般論で言えば高い。その選手を我々が獲れないとき、一人で打開するところを、二人なら打開できる状況へ持っていく。たとえばペナルティーエリアと仮定して、10回ボールが入ったら8回決められるかと言えば、我々の場合は一人だと2回しか決められない。でも、そこに二人いれば6回は決められるから、そういうモデルを構築していく。そして、ゴール前にもう一人いなければいけないモデルを考えたとき、今の我々の武器である走力を生かせます。そこで終わるつもりはないですが、自分の頭の中で、パズルを組み合わせていきました」

―プレーコンセプトを「前へ」と設定したことと、ゴール局面に二人以上が入って行くことは、まさにリンクします。それも含めて、コンセプトは「前へ」にしたのですか? 「走れ」ではなく。

「そうです。『走れ』がコンセプトになることは、おそらく僕はないと思います。走る走らないで言えば、走りたくはないんです。ただ、前へ行くための手段として、今は走らないといけない。そういう考え方に持っていきたい。『走れ』ということはチーム内でも言っていません。それがコンセプトになる怖さ、表現として命令形になる怖さは、理解しているつもりなので、選手の判断でやるべきだと思っています」

―「走れ」だと判断なく走ってしまう危険がある?

「ありますし、そこからの発展がないと思います。走ることが今のサガン鳥栖のコンセプトかと言えば、一生そのままではないですし、変化する可能性があるものです。ただ、僕が監督をさせてもらっている間は、プレーコンセプトを途中でガラッと変えるつもりはないので、そういう意味では、『走れ』のような発展性がないコンセプトは使いません」

―確かに「前へ」というコンセプトは普遍的ですね。サッカーそのものというか、ゴールを目指す競技である限りは。

「そうですね。それが選手のキャラクターによって、『前へ』ということをどう捉えるか。どう実現するか。その余白は取っておくタイプですね」

(取材・文:清水英斗)

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特集:[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]を再定義する
流行りの横文字にだまされるな

 日本社会全体に横文字が氾濫しているのと同様に、サッカー界にも横文字は横溢している。日本サッカー協会が7月15日にホームページに公開した全55ページに及ぶ選手育成の指針名「ナショナル・フットボール・フィロソフィーとしてのJapan’s Way」からして、現状の趨勢を表しているといっていい。もちろん、本文中にもこれでもかと言わんばかりに、横文字が散りばめられている。

 小誌は今回、サッカーチームの指針ともいえる横文字[プレーモデル][プレーコンセプト][プレースタイル]の再定義に挑んだわけだが、前記の「国民的蹴球哲学」(あ・え・て)ではこの3用語ではなく[プレービジョン](26~32ページ)という表現が使われている。ガクッ……。指針を表す横文字でさえ各所で統一されていない現状では、迷い人が量産されるのは目に見えている。「STOP 横文字被害! 私はだまされない」。急場しのぎとして、ひとまずこの姿勢が重要かもしれない。

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【了】

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