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喜田拓也は下を向かず「死に物狂いで勝つ準備を」。横浜F・マリノスに浸透する指揮官の言葉とは?

text by 編集部 photo by Getty Images

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【写真:Getty Images】



喜田拓也が語ったこれから先の戦い方

 明治安田生命J1リーグ第32節が8日に行われ、横浜F・マリノスはガンバ大阪に0-2で敗れた。



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 他会場の結果しだいとはいえ勝てば3年ぶりのリーグ優勝を達成できる可能性のあった試合で、よもやの今季ホーム初黒星。序盤にコーナーキックから先制を許し、そこからガンバが築いた強固な守備ブロックを最後まで崩すことができなかった。

「早い時間にセットプレーで1点与えてしまったので、そこが反省材料の1つ。ああなると、彼らの状況も状況(残留争いの渦中)ですし、守って、(相手に)ボールをある程度持たせてもOKというメンタルになる」

 マリノスの主将・喜田拓也は開始8分での失点で試合展開を難しくしてしまったことを悔やみつつ、相手を崩しきれなかったことを「まだ成長できるところ」と捉えて前を向いた。なぜなら、「諦めることなく、1点でも多くというのがマリノスの哲学」だからだ。

 虎の子の1点を守りきると覚悟を決め、自陣深くまで引いてタイトな守備ブロックを敷いたガンバからゴールを奪う糸口を見つけられなかった。それでも喜田は「自分たちに求められているのは、ああいうものを超えていくこと。それをも凌駕して勝っていくこと」だと強調する。

 是が非でもJ1残留を果たしたいガンバの選手たちの団結力は先制点によってさらに強くなり、その後のプレーに対する目線がぴったりと揃っていた。

 首位マリノスが次の試合で勝って3年ぶりのリーグ優勝を果たすには、12日の試合でジュビロ磐田を打ち倒す必要がある。ガンバと同じく残留争いの最中で、ガンバよりも厳しい立場に追い込まれている相手だ。

 となれば、今季のホーム初黒星を喫した試合よりも難しい展開になる可能性もある。割り切って自軍ゴールの守りを固め、ワンチャンスに賭ける相手を上回るにはどうすべきなのか。喜田の答えは、やはり「自分たちのサッカーを出しにいくというチャレンジ」だった。

 当然「各クラブの目指すものがあり、終盤になってくると、(残留争い中のチームが)心理的になりふり構っていられないのは理解しています」とトリコロールの主将は語る。ただ、追い込まれた状況で結束した相手を凌駕する難しさは「あまり考えたことがないので、答えが出ない」と、なかなか想像できないようだった。

 というのも「自分たちがどんな姿勢で臨むかしか考えたことがないので、相手がどういうメンタリティでくるかとか、あまり考えたことがない」から。もちろん対戦相手の特徴や戦術的な狙いは把握しておくが、「こういう相手にはこれ」と、マリノスが相手によって戦い方を変えることはないのである。

 そして、「自分たちの家」と称するホーム・日産スタジアムで哲学を曲げるようなことは絶対にしない。ガンバ戦こそ敗れたものの、ケヴィン・マスカット監督は「自分たちの家で何もさせる気はないし、何かを得て帰らせる気もない」と言い続け、選手たちにもその意識が浸透している。

 12日のホームゲームで何を見せられるか。負けた後に見せるもので、未来は大きく変わってくる。

「試合の肝となるところの押さえ方についてはまだまだ成長できますけど、(ガンバ戦でも)自分たちがやってきたことは随所に出ていた。この状況でプレッシャーを感じていたような姿勢が見えたかというと、そうではない。

次に向けても非常に楽しみです。周りがどうこうではなく、コントロールできるのは自分たちの結果だけ。そこは本当に目線が揃っていると思います。今できることは、次に死に物狂いで勝ちにいくための準備だけです」

 喜田は「愚直にやり続けて磨いてきた」マリノスの哲学やプレースタイルに「誇りを持ってやっている」と断言する。ガンバ戦の黒星で弱気になることなく、これまで通りの姿勢を最後まで貫き通せるか。

 順位表のトップに踏みとどまって、マリノスは最後に悲願のリーグタイトルをつかめるか。ここから先は何がなんでもやり遂げるという意志の強さ、試合に臨むにあたっての意識や姿勢の共有、そして諦めの悪さが試される。

(取材・文:舩木渉)

【了】

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