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ブラジル代表らしいアプローチが決め手。サイドと中央、それぞれを崩す術とは?【カタールW杯】

シリーズ:分析コラム text by 西部謙司 photo by Getty Images

ネイマール負傷は深刻な問題にはならない?



 右のハフィーニャ、左のヴィニシウスは圧倒的なスピードとキレのあるテクニックで1対1に優位性がある。さらに交代で登場してきたアントニー、ガブリエウ・マルティネッリも同様。サイドを突破できるタレントが揃っている。

 サイドを突破できてクロスボールが入って来るなら、中央でそれを決めるFWが必要だ。DFと競りながらクロスのコースへ入ってシュートできるリシャルリソンはクロスボールのターゲットとして有効なのだ。それが2点目に表れていた。

 5バックで守備を固めたセルビアは、攻撃では両サイドのクロスボールで攻めていたが、ブラジル代表のように突破できる選手がいないので遠目からのハイクロスが多くなる。アレクサンダル・ミトロビッチというターゲットはいるものの、ブラジル代表のCBコンビであるチアゴ・シウバとマルキーニョスは高さもあるのでさほどの効果はない。

 ビルドアップの向上でサイドまで運べるチームは増えたとはいえ、そこから有効な形に持っていけるチームは少なく、その点で突破できるタレントを複数抱えているブラジル代表には他国にない優位性がある。中央から崩す術を知っていて実行する力があり、さらにサイドにタレントもある。両方揃っている数少ないチームだ。

 負傷交代したネイマールは替えの効かない選手でありケガの状態は心配だが、ロドリゴがいて、フレッジをボランチに入れればパケタを前に出すこともできる。ガブリエウ・ジェズスもいる。選手層が厚く、ネイマールが欠場してもかつてのような深刻な事態にはなりにくい。優勝候補らしい磐石なスタートだった。

(文:西部謙司)

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【了】

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