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スペイン代表は「いつどこでゴールに迫るか」現Jリーグコーチが紐解く構図とメカニズム【前編】

シリーズ:コラム text by 渡邉晋

いかにして「優位性」を生み出すか



 スペイン代表が戦う上で大事にしていること。それは「マイボールの時間を増やす。簡単にボールを失わない」ことであると考えます。だから、むやみやたらにボールを放り込んだりしないし、ボールを取られたらすぐに取り返したい。

「いつ、どこでスピードを上げて、相手のゴールに迫るか」というのを共有しながらゲームを進めていると感じます。そしてそれらを実行する為に必要なことが、技術の高さや素早い判断力であり、相手の嫌がる所にポジション取りをする「良い立ち位置」ということになります。

 縦に速く、スピーディーに攻撃を仕掛ける。そんな現代フットボールのトレンドでは無いかもしれません。ゴール前での迫力や力強さ、更にはこの大会を勝ち切る勝負強さがもしかしたら足りないかもしれません。それでも、スペインのフットボールは流麗で美しい。彼らの哲学に基づくこのフットボールはとても興味深く、心を惹きつけられます。

 スペイン代表のシステムは1-4-1-2-3。ワイドにウイング(WG)を明確に置く事で幅を確保しつつ、中央ではアンカー(AN)を起点にインサイドハーフ(IH)、時にはセンターフォワード(CF)も下りて関わり数的優位を作り出します。

 こうした基本的な配置から、Build up(ビルドアップ)のフェーズにおいてWGは下りてこない、という約束事があるように感じます。その為サイドバック(SB)が高さの調節をしながらも基本的には低い位置を取り、センターバック(CB)からのパスルートを確保します。そこへ相手のサイドハーフ(SH)やウイングバック(WB)が食い付けば、高い位置を取っているWGは相手守備者と1対1の状況になっている、という優位性を生かします。スピードがあり、突破力に長けている選手をWGに置いていることも重要なポイントです。

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