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Jリーグ 12か月前

「本気で頑張ってみようかな」浦和レッズ興梠慎三、36歳の変化と悔恨の念。ACL決勝で背負った重責と感謝【コラム】

シリーズ:この男、Jリーグにあり text by 藤江直人 photo by Getty Images

「自分のために一回本気で頑張ってみようかな」


【写真:2023 Asian Football Confederation (AFC)】



 敵陣のセンターサークル付近で得た直接フリーキック。MF岩尾憲がペナルティーエリア内の左サイドへ送ったボールを、DFマリウス・ホイブラーテンがゴール中央へ折り返す。あうんの呼吸でニアサイドへ飛び込んできた興梠の頭が、わずかに届かなかった次の瞬間だった。

 興梠の動きに気を取られたアルマユーフがボールに触れない。ファーサイドへボールがこぼれていった先で、カバーに戻ってきたMFアンドレ・カリージョが足で押し込んでしまった。

「多分、僕が触っていたら普通に決まらなかったでしょうね。それでも、半分は僕のゴールじゃないですか。あれはオウンゴールじゃないと思いますよ」

 子どものように無邪気に笑った興梠は、プレシーズンから好調を維持している。秘訣はチームの始動前に、2005年にプロになってから初めて敢行した自主トレにある。2月の開幕前に行われた恒例のキックオフカンファレンス。浦和を代表して出席した興梠は、こんな言葉を残している。

「この年になってくると1年、1年が勝負になる。自分自身、いいパフォーマンスができるのは今年までかなと思っているので、いままで以上に努力して、チームのため、自分のために一回本気で頑張ってみようかなと。いまでは『自主トレは大事だな』と思っています」

 例年の興梠は、チームが始動する直前まで完全オフを満喫。キャンプインしてから、徐々にコンディションを上げていく調整方法を貫いていた。それでも怪我とほぼ無縁。9シーズン連続2桁得点記録を含めて、ゴールも量産してきた秘訣を聞くと、こんな言葉が返ってきたこともある。

「特にないです。好きなものを食べるぐらいですね。脂ものなどを気にせずに食べる、というのが一番いいのかな。あとは、日ごろの行いがいいからじゃないですか」

 スコルジャ体制のもとで、浦和はともに無得点で開幕連敗を喫する最悪のスタートを切った。しかし、興梠が1トップの先発に定着してからは、公式戦で5勝3分と無敗のまま2ndレグを迎えた。8試合のなかには敵地リヤドで引き分けた、4月29日の1stレグも含まれる。

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