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横浜F・マリノスを封じた攻撃的な「盾」。大一番で光ったヴィッセル神戸の共通理解と狙いとは

text by 加藤健一 photo by Getty Images

組織的守備と修正



 酒井が「ライン(コントロール)と前線の選手の限定によってうまく守れた」と話すように、神戸はマリノスを相手にしても積極的に最終ラインを高い位置に保った。さらに、「相手の両サイドバックのところで空中戦で勝てたり、数的優位を作れるというのはチームとして共通理解は持っていた」とも述べている。

 ダブルボランチの一角とトップ下が献身的に横にスライドすることでボールサイドの数的優位を保ち、ボールの出どころを制御。それにより、裏を狙うマリノスの選手がオフサイドポジションになるシーンも多く、神戸はマリノス陣内に押し込んでいる。

 指揮官が「セカンドボールを拾えなければお互いに行ったり来たりという展開になる」と言っていたが、神戸は前線から最終ラインまでをコンパクトにし続け、その局面での優位性を作り出した。酒井の言葉通り、「チームとして守る」意識の浸透が、完封勝利につながった。

 酒井が「修正を入れながら」と話していたが、疲労の色が強くなった後半はベンチサイドの酒井が頻繁にベンチとコミュニケーションを取る姿が目立った。終盤は5バックにして中央を厚くするなど、試合中の修正力も完封勝利の一因と言える。

 酒井は「5試合ある中ですべてが起こりうる状況というのは変わらない」と気を引き締めつつも「勝ったというのはすごく大事なこと」と大一番で勝利したことの意味を噛みしめる。そのうえで、残り5試合でやらなければいけないことを改めて強調した。

「残り何試合だろうが、10試合、20試合だろうが、一個一個勝っていくということを自分たちは常に口にしてきた。ハードワークというのは今日も出せた。それを残り5試合やり続けることが自分たちにいい結果をもたらす確率を上げる最良な策だなと思う」

(取材・文:加藤健一)

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