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Jリーグ 2か月前

「このタレント力でこの位置は…」名古屋グランパスはなぜ苦しんだのか? ようやく1勝の現在地【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「この位置にいてはいけない」

名古屋グランパス
【写真:Getty Images】



「もちろん昨シーズンから選手が入れ替わったのが1つ。それを踏まえて、キャンプで積み上げてきた時にケガ人が出て、開幕戦でメンバー含めて、戦いが変わってしまった。そうなると、やれることも限られるし、それまでやれていたこともできなくなる。悪循環に陥っていたと思います」

 彼が言わんとしているところは、まず中谷、藤井、丸山祐市(現川崎フロンターレ)の主軸DF移籍による守備の変化だ。J1屈指の安定感を誇っていたディフェンス陣がいなくなれば、再構築は容易ではない。DF陣は攻撃の起点でもあるため、攻めのリズムも変わってしまったのだ。

 クラブはハ・チャンレ、三國、井上詩音を補強し、ハ・チャンレを中心に新たな組織を構築していたが、新大黒柱が鹿島アントラーズ戦を欠場。いきなり歯車が狂ってしまった。ハ・チャンレは町田戦から復帰したものの、今度は米本をアンカーに置いた形がうまく機能せず、守から攻への鋭さをウリにする町田に屈した。新潟にも連敗したのを受け、長谷川監督も柏戦で中盤を再構成し、森島と山岸をシャドーに配置。永井を1トップに据えて、柏のハイラインの背後を突くことを徹底した。

「ヨネ君と僕のダブルボランチでこのシステムをやったらこのくらいできるというのは自分たちも分かっていた。そこに関しての手ごたえはありますけど、僕らはもっと先を求めなければいけない。勝ちながら積み上げていかないといけない。選手それぞれが自分たちのストロングを出せないとJ1では結果がついてこない。そのことを苦しんだ3試合で改めて感じました」

 稲垣も神妙な面持ちでコメントした。が、この1勝だけで全てが解決するわけではない。指揮官も「ワンアンカーを捨てたわけではない」と言うが、多彩な戦い方を実践するまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。椎橋慧也、山中、中山克広ら新戦力もまだ十分にフィットしていないため、彼らの力をどうチームに組み込みつつ、総合力を高めていくのか。その重要なテーマにも直面している。

 ただ、ケガで出遅れていた山岸、キャスパー・ユンカーの両アタッカー陣が復帰したのは朗報。序盤の得点力不足は特にユンカーの不在が大きかった。彼がフル稼働できる状態になり、さらに山岸や永井らが推進力をより発揮できるようになれば、名古屋はもっと勝ち点を稼げるはずだ。

「このタレント力でこの位置(暫定18位)がおかしいってことは自分たちも分かっている。ここにいちゃいけないチームなので、這い上がっていきたいです」と稲垣は語気を強めた。それがチーム全員の共通認識だろう。インターナショナルデーで試合が2週間空くこの期間を最大限有効活用して、彼らはチーム完成度を高めていくしかない。

(取材・文:元川悦子)

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