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Jリーグ 1か月前

「すごく腹立たしい」鹿島アントラーズ、屈辱的な連敗の理由。相手から「キツそうだった」と言われてしまう現状【コラム】

シリーズ:コラム text by 元川悦子 photo by Getty Images

「いくら崩しても…」



 指揮官はFC東京戦前日のオンライン会見で「シーズンを半年で消化したコロナ禍の2020年に私はFC町田ゼルビアで指揮を執っていたが、保有人数もそれほど多くない中、ローテーションをほとんど使わず、ケガ人もほぼ出さずにリーグ戦を戦い抜いた。それを考えると、今の鹿島で『ローテーションを使った方がいい』というマインドになると選手たちが必要以上に疲れを感じる」と発言。固定起用でも問題ないと考えていたことを明かす。

 ただ、この日の鹿島はチーム走行距離・スプリント回数といったデータ面でもFC東京を下回っている。今後は大型連休の連戦も控えるだけに、チームの幅を広げていかなければいけないのは確かだろう。

 もう1つ、気がかりな点は3試合で鈴木優磨の1点しか取れていないこと。

「いくら崩しても最後のパスと最後のシュートがよくなきゃ点は入らないんで、そこの質は自分含めて、1人1人が上げる必要があるかなと思います」と背番号40は反省を口にした。が、彼自身のシュートが2試合続けてゼロというのは直視しなければいけない重大な課題だ。鈴木優磨が最前線にいて、彼のところが攻撃の起点だということは対戦相手もよく分かっているから、徹底的にマークする。今回のFC東京も真ん中に人数をかけて包囲網を作っていた。そうなった時に「次の手」がないのが今の鹿島なのだ。

 開幕3戦はチャヴリッチを中央に置いていた分、ひと味違った攻めの迫力が感じられたが、彼はもともとウインガー。3月17日の川崎フロンターレ戦以降はサイドに主戦場を移している。そこでチャヴリッチが前向きにプレーできる回数が多くなれば、サイドをより効果的に攻略でき、鈴木優磨の決定機も増えるはずなのだが、そういった形にも思うように持ち込めていない。

 だからと言って、指揮官はチャヴリッチを中央に戻す考えはない様子。この3試合を見ると、鈴木優磨の背後にいるトップ下を名古新太郎、土居、樋口と入れ替え、攻撃に変化をつけようと試みてはいるものの、フィニッシュやラストパスの質が上がり切らない。

 土居は「今はまだ攻撃陣全体が同じ絵を描ききれていない」と指摘したが、アタッカー陣の誰が出てもいいリズムで攻撃し、相手のギャップを突いていけるような高いレベルに引き上げていく必要がある。それは簡単ではないだろうが、今の壁を乗り越えない限り、鹿島の上位浮上、優勝争い参戦、ひいては常勝軍団復活は難しいと言うしかない。

「今はポポさんのスタイルにどんどんチャレンジして精度を上げていこうとしている。パスがつながっていればチャンスになるのは間違いないんで、自分たちのクオリティを上げていかないといけないと思います」と鈴木優磨自身も強調したが、彼らは前向きな方向に進めるのか。ポポヴィッチ監督体制発足、最初の厳しい局面に立たされた鹿島がここからどういった軌跡を描いていくのか。それを慎重に見極めたい。

(取材・文:元川悦子)

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