「自分の能力だと…」悔しい失敗の経験があるからこそ
「最初はキャッチしようかなと思って。(ただし)スピードを見たら、弾かないとなと、そういう感じです」
山口がキャッチを優先させているというのは、以前にも本人から聞いたことがある。例えば等々力陸上競技場で行われた3月12日のACLEラウンド16の、4−0で勝利した上海申花との第2戦の試合後のこと。
「積極的にちゃんと守備から攻撃という意味で、キャッチして、ハイボールとかも、パンチングではなくキャッチして攻撃につなげるというのは認識していました」
守るだけがGKの仕事ではなく、常に攻撃の起点になるチャンスを狙い続ける。そう考えてプレーを選択してきた山口だからこそ、オタヴィオのシュートにもまずはキャッチでと考えていた。結果的にそれがプレーの迷いに繋がり、弾ききれず失点に。悔しさのあまり、ピッチにうずくまるほどだったが、それは「自分の能力だと、普通に止められたシュートだと思う」からだ。
そして「そのミスを引きずってやるわけにはいかないので。ゲーム中はすぐ切り替えて。本当に勝つためにどうやるかを常に考えていました」と切り替えたのだという。切り替えると言っても、話はメンタルだからそう簡単なことでは無いはずだが、これまでに積み重ねてきた悔しい失敗の経験があるからこそ、切り替えられたのだと話していた。
川崎は71分に2失点目を喫してしまい再度同点に追いつかれたが、PK戦が視野に入る延長前半の98分に脇坂泰斗が勝ち越し弾を決め3-2で勝利。
「本当にありがとうという一言です」と胸を撫で下ろす山口だった。
なお、試合2日前の4月25日の取材時にPK戦について「僕はPK戦結構好きなんで。PK戦になったら楽しんでやっていきたいと思うんですけど」と話しており、PK戦を望むくらいのメンタリティなのかと考えたが、そういう訳でもなかった。そして脇坂が決めた3点目について「本当に嬉しかったです。これで(3-2で)決まる可能性はあると、瞬間的に思って。もちろん決めた後に絶対失点しないというのは、強く思っていました」と勝ち越したあとの心境を振り返っている。