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Jリーグ 2か月前

ボール保持計画に生じた狂い。FC町田ゼルビアの「ボールを繋ぐんだぜ!」はなぜうまくいかなかったのか?【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

まるでアトレティコ・マドリード。今季のチャレンジは…

 今季はボール保持と3バックシステムを目玉にシーズンに取り組んでいた町田。昨年は旋風を巻き起こした徹底されたロングボールとセットプレーの雨嵐、[4-2-4]のようなプレッシングで、多くのチームから勝ち点を奪っていきました。

 もしかしたら優勝の可能性があるんじゃないかと思いましたが、2周目になると、町田への対策が進んでいき、勝ち点を積み上げるペースが落ちていきます。強力な補強で何とか優勝争いにくらいつきたいところでしたが、最終的に力負けとなったシーズンとなりました。

 J1に定着することを考えたら、昨年のスタイルをさらに徹底させていくことも選択肢にあったでしょう。しかし、黒田剛監督に率いられた町田は異なります。相馬勇紀、中山雄太と日本代表に直近まで選ばれていた選手を補強してまで、J1定着では確かにわりにあいません。

 昨年のリーグ戦の2周目で町田が最も苦しめられた局面はボールを持たされたときです。まるでかつてのアトレティコ・マドリードを彷彿とさせる弱点ですね。だったら、ボール保持でも周りを巻き込んでいこうとチャレンジしていたのが今季の序盤戦でした。

 町田のボール保持には、配置のかみ合わせを利用しながら、選手の立ち位置で勝負する特徴がありました。ビルドアップ隊の枚数を[3-2]にすることで、相手のハイプレッシングを牽制しながらボールを繋ぎ、ビルドアップの出口の見つけ方は選手の変幻自在の立ち位置を利用しています。位置が固定的になりそうなセントラルハーフも果敢に前線に飛び出していくことが多く、繰り返される選手の移動とローテーションを常に相手が管理することは難易度が高めとなります。

 ただし、裏返すと、センターバックの面々はビルドアップの出口を見つけボールを届けることはできるけど、自分たちでボールを運び、相手をひきつけることで、ビルドアップの出口を作り出すことはできなかったといえます。ちなみに、この方法論は昨年の形とかなり似ています。

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