「逆にあれで…」相手に勢いを与えたきっかけ
「松村優太としては鹿島を出たくなかったですけど、(出場機会のない)1選手としては出るべきだと考えました」と当時の彼は苦渋の表情を浮かべていたが、鹿島とは異なる環境で全く違ったポジションに取り組み、自身を客観視する時間も必要だったのではないか。結果的にはスーパーサブとしての位置づけから脱しきれなかったが、「這い上がっていくんだ」という新たな覚悟が生まれたという。
そのうえで、「自分が帰ってきた意味は、まだタイトルを取れていないチームにタイトルを取らせること」と今季始動時に彼は宣言した。「自分が躍動する姿を僕は諦めていないし、優勝に貢献してその輪の中にいる姿を目指したい」とも話したが、それを遂行するためには、この川崎戦でチームを勝たせる必要があった。松村のアシストにはギラギラした野心が込められていたはずだ。
けれども、この日の鹿島はここからの試合運びが悪かった。前半終了間際に相手CKから伊藤達哉に同点弾を食らい、1-1で試合を折り返すことになったのだ。
後半開始早々には鈴木優磨からのタテパスに松村が鋭い抜け出しを見せ、交代出場したばかりの相手DFジェジエウを退場に追い込んだかと思われた。が、背番号27の動きが一歩早く、惜しくもオフサイドの判定。ここで数的優位に立てていたら、試合展開は大きく変わっていたかもしれないだけに、このワンプレーは悔やまれた。
「逆にあれで相手が応援含めて盛り上がってしまった」と松村は苦々しい表情を見せたが、ここからの川崎は一気にギアを上げてくる。そして迎えた58分、知念慶がマルシーニョにボールを奪われたのきっかけにショートカウンターを繰り出され、マルシーニョに逆転弾を決められる。これが致命傷となってしまったのだ。
