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Jリーグ 4か月前

この試みは世界でもほとんどない。アビスパ福岡の狙いは何なのか? 先鋭的なチャレンジ、最初の犠牲者は…【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

あっという間に広がっていった“枚数調整”

 アリエン・ロッベンやフランク・リベリ、キングスレイ・コマン、ドグラス・コスタという強力なウイング(WG)に対して、あくまでハイプレッシングを行うとき限定となるが、同数で対応することを受け入れるチームが増えていった。相手の前線と同数を受け入れることで、相手のビルドアップにおける数的優位を許さないチームが増えてくる。ハイプレッシングにかけられる枚数が増えるからだ。

 つまり、68メートルの幅を3バックで守ることが限定された局面で可能になるならば、相手のビルドアップ隊を驚かすようなハイプレッシングが可能となることが証明されていった。余談だが、この枚数調整は全世界にあっという間に広まっていった。

 ハイプレッシングはマンマークで行うチームがスタンダードになりつつあるが、その発祥と言ってもいいだろう。その対策として、エデルソンからのロングボールやデ・ゼルビによるボール循環によるハイプレッシング攻略が生まれていった。

 常に68メートルを3バックで守ることは不可能なので、自陣に撤退したときはほぼ全チームが5バックで構えている。あくまでハイプレッシング限定の話となる。ただし、広大なスペースで相手の3トップとガチンコで向かい合うのだから、センターバック(CB)たちに求められる能力はえげつないものになってきている。福岡では対人に優れた3バックが多く在籍している。特に出世頭の安藤智哉は怪我をすることなくチームを支え続けているのではないだろうか。

 なお、3バックに胆力がないと、ハイプレッシングは絵に書いた餅になってしまう。高いディフェンスラインを維持し、ハイボールを跳ね返し続け、広いエリアで訪れるデュエルを3バックの面々が受け入れることができなければ、チームが取られる選択肢は【5-4-1】の撤退がメインになってしまうからだ。流行している【5-2-3】の振る舞いのなかで、3バックの強さや、どれくらいのラインを維持しているか、どれだけ相手を捕まえて持ち場を離れているかに注目すると、チームの色がわかってくるかもしれない。

 ハイプレッシングでもうひとつ注目しておきたい点は、3トップの形だ。

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