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Jリーグ 4か月前

この試みは世界でもほとんどない。アビスパ福岡の狙いは何なのか? 先鋭的なチャレンジ、最初の犠牲者は…【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

金明輝監督に狙いがあるのだろう

 相手のビルドアップが3バックのまま行われるならば、そのままの配置でプレッシングを行えばいいだろう。問題は相手のビルドアップの配置が4バックのときだ。このときに3トップを2トップ+トップ下の形に変化させることで、相手の配置に噛み合わせるチームが多い。福岡もこの形を採用する傾向にある。相手に配置の優位性を与えずに、自分たちは配置の優位性を得ようとしているところが、明輝監督らしさを感じさせるところだ。

 福岡のボール保持はかつての鳥栖の雰囲気をまといながらも、新たな振る舞いを見せている。ボールを保持することで守備をする、休憩することはグアルディオラ監督によって世界中でスタンダードになった作戦だ。特に灼熱の日本において、ボールを全く持たずに自分たちのプレッシングを中心に試合を進めていくことは至難の業になっているのではないだろうか。

 ボール保持で守備をする以外にも、ボールを保持する、もしくは捨てることによって、試合の展開や流れを自力で変換させる作戦がサッカー界に広まってきている。福岡はボールを保持する能力は高いが、ボール保持に固執することがない。ボールを保持して試合をペースダウンさせたほうがいい場面でも、トランジション合戦を臨み続けることがある。このあたりの試合展開をどのように自分たちの都合の良い流れに持っていくかは外からでは伺いしれない明輝監督の狙いがあるのだろう。

 福岡のビルドアップはゴールキーパー(GK)の小畑裕馬が興味深い存在感を放っている。前述したように、ハイプレッシングはマンマークの世界線において、GKがどのようにビルドアップに関われるかは日に日に重要になってきている。チェルシーやマンチェスター・シティでは、エクストラセンターバックとしてGKを利用している。GKをCBの間に配置するオーソドックスな形から、GKとCBで2バックを構成し、ボールを動かすチームまで出てきている。

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