ファジアーノ岡山が最初の犠牲者となった
結局のところ、ビルドアップにおいて、GKがゴールマウスから離れないのであるならば、純粋なフィールドプレイヤーとしてカウントすることはできない。0.5くらいのカウントである。なので、相手がマンマークで来るならば、相手のGKを除けば、ビルドアップの局面は10.5対10くらいになるのだろう。0.5の優位性を消すために、パリ・サンジェルマンはウスマン・デンベレにGKまで絶え間ないプレッシングをかけさせているのだ。
10.5を限りなく11に近づけるためにエクストラセンターバックが考えられたのだろう。Jリーグでは柏レイソルで小島亨介が、福岡では小畑がフィールドプレイヤーと同じ存在感を示すことにチャレンジしている。ただし、小畑のチャレンジはもっと先鋭的なものになっている。
相手を押し込んだときのサッカーは11対10で展開されることとなる。GKが攻撃参加するというけれど、ビルドアップに限定された話となるからだ。相手のGKが味方のセンターフォワード(CF)のマークをしないように、味方のGKがハーフウェーライン付近まで上がってきてポゼッションに貢献することはほとんどない。しかし、福岡は小畑を自陣の高い位置まで進出させ、かつ、2バックの一角としてプレーさせている。
小畑のフィールドプレイヤー化作戦によって、ファジアーノ岡山が最初の犠牲者となった。人基準の意識の強い岡山は、フィールドプレイヤーのように振る舞う小畑の存在に面を食らった形となる。
ハイプレッシングを行いたい浦和レッズは、高い位置まで出てきてCBのようにプレーする小畑の存在によって、ミドルプレッシングへの移行を余儀なくされていた。相手を押し込んだときのGKを使ったビルドアップというこの試みは世界でもほとんど見ることがない。2バックの真ん中にGKを配置する形は高い位置でもリスクは低いかもしれないが、高い位置で2バックの片方をGKに担わせる胆力は世界に先駆けている部分と言っても過言ではないだろう。